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【地下部環境制御】土壌環境の計測と制御の方法

地下部環境制御

地上部の環境計測や制御は施設園芸分野では近年大変重視されており、様々な機器や制御技術が開発されています。一方で地下部環境については地上部環境への注目に比べ、情報も少なく、関連する制御機器なども少ないと思われます。しかし植物の生育には根の機能(給水と養分吸収)が損なわれないよう、地下部環境を適切に保つ必要があります

また地上部環境の制御が充実すればするほど、地下部環境の制御も充実させないと、片手落ちとなる可能性もあります。本稿では地下部環境の計測および制御について、おのおのの主要な要素についてポイントをお示しします。

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地下部環境制御の重要性

地上部環境が整えられ、光合成の原料となるCO2が供給され、また空気中の飽差も適切に管理され蒸散の条件が整ったとしても、土壌水分が不足していれば根による吸水が十分にできないことになります。その結果、蒸散量に対して吸水量が不足し、植物の萎れなどストレスの原因となる可能性もあります。

また吸水と同時に肥料分吸収も阻害されることになり、植物の生育に必要な養分が不足する可能性もあります。

土壌水分は不足しても過剰になってもストレスの原因となる

土壌水分は不足してもストレスの原因となりますが、土壌水分が過剰な場合は土壌中の気相(空気が含まれている空間)が少なくなり、根への酸素供給が阻害される原因となります。根は呼吸をしており、酸素を吸収して養分吸収に必要なエネルギーを生んでいます。過剰な潅水を防止し、同時に排水性も確保する必要があります。

 

このように土壌水分を適切に保つことは、地上部環境を適切に保つことと同様に植物の生育にとって重要なことと言えます。最近は土壌水分率を指標として管理することが多く、そのための土壌水分センサーが土耕栽培で使用される場面が増えています。

地下部環境の計測

近年、地上部環境の計測用に導入が進む通信機能を持ったモニタリング機器では、主に温湿度やCO2濃度を計測するものが多くみられます。機器によっては予備の入力端子を持っており、そこに土壌水分センサーを接続してモニタリングを行うことも可能となっています。土壌水分センサーには、「土壌中の水分割合である体積含水率を表すもの」1)があり、土壌水分率(%)として値を得ることができます

センサーによる土壌水分率の計測
センサーによる土壌水分率の計測

土壌水分は測定位置や深さによって変化することが多く、これは土質の違いや潅水量の違いにより発生するものです。多点で計測して圃場全体の土壌水分を把握するのが理想ですが、コストがかかるため実際には畝の中央など代表的な位置を選び、一定の深さでの計測をすることになります。

 

土壌水分センサーには他にも「毛管水や吸着水など土壌中に引っ張られるエネルギーの大きさを示すマトリクスポテンシャルを表すもの」1)もあります。

土壌の排水性確保

土壌の排水性の確保は、粘土質など、特に水はけの悪い土質の場合は重要となります。良好な排水性により根への酸素供給を確保し、根痛みなどをふせぐことができます。栽培が開始前に暗渠を土中に設置し、さらに系外への排水経路を持たせることが望ましいでしょう。

排水性の確保が重要

土中に硬盤がある場合はサブソイラーなどを用い弾丸暗渠を引いて排水の経路を確保することもあります。またハウスの土壌についてだけではなく、ハウス周辺にも排水路を設置し、ハウスの裾に止水シートを展張することで、雨水のハウス内への侵入を防ぐことも重要となります。

地温の制御

地温はハウス内の日平均気温に近似した値になると言われており、それを目安として地温を管理することが考えられます。特に冬期に地温が低下すると根の機能が低下し樹勢に影響を及ぼす可能性があるため、地温の制御は重要と考えられます。

地温や土壌水分、ECをモニタリング(ゼロアグリ)

冬期に地温を確保するには従来は黒マルチや赤外線を吸収する素材のマルチを用いることが多くありました。しかし近年では白マルチを展張し、通路や畝からの反射光を植物に当てるような方法がみられるようになりました。その場合には直射による地温上昇効果が期待できないと考えられ、地温の調整には換気や暖房により調整されたハウス内の平均気温を目安とすることになるでしょう。

土壌水分のモニタリングと潅水量の調節

手動潅水の場合でも、土壌水分をモニタリング可能であれば、グラフによる変化をみながら一定の土壌水分を確保できるよう潅水回数や潅水量を調節することが考えられます。実際のグラフでの土壌水分率の変化は、潅水直後には大きな山がみられ、その後はゆるやかに値が降下していきます。目標とする土壌水分率まで低下した際に次の潅水を行うことで、一定の土壌水分を確保することが可能です。

潅水による土壌水分率の上昇

この方法は、土壌水分センサーと通信機能を持ちクラウド経由でモニタリングする計測機器により可能であり、スマホ画面にグラフ表示をさせ、必要なタイミングで手動潅水を行う形になります。

 

こうした一連の操作について、AIを用いながら自動化したのがゼロアグリによる潅水制御です。ハウスの土壌の特性が土壌水分率の変動のパターンに現れることもあり、そうしたパターンの学習をしながら、より土壌水分の安定化をはかる機能をゼロアグリは持っています。省力的かつ安定的な土壌水分制御が可能といえるでしょう。

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引用文献

  • 安東赫、養液土耕栽培、施設園芸・植物工場ハンドブック
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