隔離栽培は土壌が地床から隔離された栽培方法で、根域制限栽培の一種です。防根透水シートを用い土壌を隔離し、その範囲内に根を伸長させることで土壌病害を抑制します。
また土壌容量と根域が制限され、土壌水分をコントロールしやすいため、品質向上をはかることも可能です。こうした隔離栽培の特徴について、ご紹介いたします。
隔離栽培の方法
防根透水シートを用いる隔離栽培では、畝程度の幅で根域が張る程度の範囲に防根透水シードを敷設します。防根透水シートには様々な種類があり、不織布製の厚手のものや、ポリエステル生地の薄手のものがあり、いずれもシートの微細な孔より排水が可能で、根の伸長を防止するものです。
防根透水シートの埋設には、溝を掘り、その上にシートを敷設し、さらにシートの上に土壌を被せるといった手順が必要となります。
手作業で行うのは重労働ですが、管理機に取り付ける専用の防根シート埋設機を用いることで、作溝・整地・シート配置・シートの覆土固定の工程を一度に行うことができ、大幅な省力化がはかられています。
高知県のメロン栽培では従来の手作業では10a当たり50~80時間必要であったシート埋設工程の作業時間が、約13時間になったことが報告されています1。
隔離栽培による土壌病害抑制
防根透水シートによって土壌病原菌により汚染された土壌と栽培に用いる土壌を隔離することで、土壌病害の抑制効果が期待されます。例えば重要な土壌病害である青枯病に対しては、青枯病菌が生息する土壌を薬剤等により消毒を行い、また青枯病への抵抗性を持つ台木を接ぎ木するなど対策を行います。しかし菌自体を完全に取り除くことは難しく、青枯病の根絶には困難が伴うことが多いと言えます。
青枯病対策のために養液栽培に切り替えるケースもあるほどですが、設備や資材のコストが必要となります。隔離栽培では防根透水シートと潅水資材、およびシート埋設用の機械類等への投資が必要ですが、養液栽培への投資に比べれば安価なものとなります。
隔離栽培では、防根透水シート上の栽培用土壌が消毒されている必要があり、その範囲のみ農薬による消毒や太陽熱消毒等を行います。また地床の土壌とは異なる、土壌病原菌が生息していない土壌を投入し、栽培に用いる場合もあります。このように隔離栽培および他の手段を組み合わせ、土壌病害対策を入念に行うことで病害抑制をはかることも考えられます。
→土壌病害についてはこちら「連作障害/土壌病害とは?原因と対策をご紹介」
隔離栽培による品質向上
隔離栽培は根域制限栽培の一種ですので、土壌水分のコントロールも可能となります。潅水を抑制して水分ストレスを加え、メロン、スイカ、トマトなどの栽培では糖度向上の手段として用いられています。高級果物の温室メロンの栽培や、土耕での高糖度トマト栽培では隔離栽培が威力を発揮しています。
近年の高糖度トマト栽培は、少量培地による養液栽培やフィルムを用いた養液土耕栽培など、装置化された中で水分ストレスを加える栽培法が主流となっています。そうした栽培法には設備投資が必要で、また消耗資材も多く必要な場合もあります。生産コストの縮減が求められる中、隔離栽培は低コストでトマトの高糖度化を行える栽培法として、今後は改めて注目されるかもしれません。
高知県香南市では「夜須のフルーツトマト」2として、防根透水シートによる隔離栽培、精密な点滴潅水による土壌水分管理、有機質資材の利用、環境制御とデータ管理や光合成促進など、様々な技術を組み合わせ産地化やブランド化を進めています。
夜須のフルーツトマトの栽培の特徴としては、特に特別な資材等を使っている訳ではありません。 恵まれた自然環境を最大限利用し、綿密な環境管理と肥培管理により栽培されています。 このようにして樹体を健全に保つ事により、健全で栄養バランスのとれた果実を収穫する事ができます。
夜須のフルーツトマトさんの投稿 2014年2月21日金曜日