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根域制限栽培(根圏制御栽培)の種類と特徴~ブドウやナシなど果樹栽培に導入するメリットとは~

土壌に植えられた植物は、根を縦方向や横方向に伸長させます。また根は潅水や降雨により土壌に浸透した水分を吸収します。このような根の動きや働きを物理的、空間的に制限する栽培方法として根域制限栽培(根圏制御栽培)があります。主に果樹栽培で用いられており、養液栽培や養液土耕栽培とも異なるジャンルの栽培方法となっています。

根域制限栽培とは

根域制限栽培について、農研機構の農業技術辞典(NAROPEDIA)1では、「土量を制限した培地に果樹を新植し、灌水や施肥による制御を適正に行なうことで、樹体の矮化、着花促進、果実品質向上を目的とした栽培法。」と定義されています。

 

また根域制限の方法について、「苗木を収穫用コンテナや専用容器などに植栽するコンテナ栽培(ボックス栽培)、地表にウレタンマットや不織布(防根シート、透水シート)を敷き、その上に盛土するベッド栽培、土中に設けた不織布の枠内に苗木を植栽して根域を制限する防根シート栽培がある。」と、いくつかの方法を紹介しています。これらの方法について概要をご紹介します。

根域制限栽培の種類と特徴

コンテナ栽培についてNAROPEDIAには「40~70L程度の培土を使用することが多い。」とあり、樹脂成型品などのコンテナに土壌を詰め果樹苗の定植をして行います。

またブドウ栽培ではコンテナ土壌容量を60リットルとすることで、植栽1年目で樹形確立、2年目から収穫、4年目で成園化可能とされています(富山県の研究成果2)。このコンテナ栽培によって、「通常の地植えでの栽培が不適な場所でも高品質なぶどうが安定生産できる」としており、場所を選ばず早期に収穫が可能な栽培方法と言えます。

水稲育苗ハウスを利用した栽培方法として開発された技術で、養水分のコントロールが可能、土壌条件を選ばない、樹体をコンパクトに維持管理できる、管理作業がラクといったメリットがあります。

ブドウのポット栽培(茨城県立農業大学校ゼロアグリ導入圃場)

地表に防根シートを敷き、その上に盛土するベッド栽培は、マルチ栽培と組み合わせてミカン栽培での利用がされています。ミカン栽培では地表面に遮水のためのマルチを張り、点滴潅水で土壌水分を調節し水分ストレスを与えることで、果実の品質向上(高糖度化)をはかっています。しかし周囲からの水分の浸透がある場合や、樹園条件のバラツキの影響などで、果実品質も一定にならない問題がありました。

 

 

そこで不透水性の防根シートを地表面に敷き、その上に畝を立ててブロックで囲う形で根域制限を行う方法が開発されました。佐賀県では、根域制限高うねマルチ栽培(佐賀方式)3として普及が進んでいます。地表面のマルチと根域制限、および潅水による土壌水分のコントロールが可能となり品質の安定化とミカンのブランド化が進んでいるとのことです。詳細は参考文献の図表などをご参照ください。

パレットを用いた根域制限栽培(茨城県立農業大学校ゼロアグリ導入圃場)

防根シート栽培は、土中に防根シートを敷き、その上の土壌で栽培を行う栽培方法です。野菜の栽培でも用いられることがあり、特に青枯病などの土壌病害の多発地帯では土壌消毒や抵抗性品種などと組み合わせ、病害防除効果を発揮しています。汚染土壌と栽培用の土壌を切り離すことで罹病リスクを低減するものです。またコンテナ栽培やベッド栽培と同様に土壌水分のコントロールが容易なため、トマトなどの高糖度栽培にも利用されています。高知県のスイカ栽培での防根シートの利用状況がこちらのブログ4で詳細に紹介されています。

防根シートの例

根域制限栽培での注意点

NAROPEDIAには根域制限栽培について、「低樹高となることから、結実管理が大幅に省力化され、加温施設栽培を組み合わせて早期出荷も可能となるが、樹勢や収量の維持が難しく、きめ細かな管理が必要となる。とくに、水分管理が最も重要な技術であり、自動潅水装置が必要である。」とあります。

 

このような点からも、限られた根域と土壌を利用し、生育と品質向上をはかるための潅水管理を適切に行うことが求められるでしょう。また、ベッド栽培や防根シート栽培では、十分な根域制限効果を発揮するための施工方法など、様々な工夫がみられますので、施工マニュアル等を確認しながら導入を行う必要があるでしょう。

 

根がシートの外に伸びる場合などは根域制限効果が低下するため、そうしたことの無いような施工と確認が求められます。

 

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ゼロアグリ導入事例「茨城県立農業大学校|ブドウ・ナシ」

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引用文献

  1. 根域制限栽培、農業技術辞典(ルーラル電子図書館) http://lib.ruralnet.or.jp/nrpd/#koumoku=11864
  2. コンテナを利用した根域制限栽培、水稲育苗ハウスを活用した果樹栽培 ぶどうアーチ栽培編(富山県農林水産総合技術センター園芸研究所果樹研究センター) https://www.ari.pref.niigata.jp/nourinsui/manual/budou/budou_all.pdf

 

参考文献

  1. 温州ミカンの根域制限栽培の造成について、佐賀県果樹試験場 常緑果樹研究担当 田島 丈寛 https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00323025/3_23025_91505_up_coht371b.pdf
  2. 防根透水シート 敷き替え作業〜まとめ (2017年03月14日) 、夜須・スイカ屋の女房blog~高知家の”はちきん”やきねえ~http://blog.livedoor.jp/suikayaemoto/archives/13533765.html
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