野菜の健全な生育には、植物の地上部、地下部と取り巻くさまざまな環境要因が、植物にとって好適な状態であることが必要です。それらは、光や気温、湿度、二酸化炭素濃度などさまざまな要因がありますが、今回はその中でも「水」について取り上げてみたいと思います。
植物における「水」の役割
植物が必要とする水には、一般的には以下の役割があると言われています。
①膨圧による体制の維持
②光合成の原料
③物質(養分)の溶媒
④気化熱による体温上昇防止(蒸散活動への貢献)
⑤湿度環境への影響
水は植物体の多くをしめ、植物体内では光合成の原料となり、根から吸収された無機要素や、葉で合成された同化産物などの移動を助けています。また、葉の気孔から水分を蒸発(蒸散)させて、葉の温度の調節もしています。 ※次項で仕組みを詳細に説明
蒸散の役割とは
植物にとって蒸散の役割として,まず細胞壁から細胞間隙への蒸発は周囲から潜熱を奪うので、連続的な水蒸気の放出は葉を冷却します。また、蒸散によって葉の水分が失われると、細胞の膨圧(圧ポテンシャル)が低下し、葉の水ポテンシャルが低下します。葉と土壌との間に水ポテンシャル勾配が形成され、このエネルギー勾配が土壌-植物-大気連続体(Soil-Plant-Atmospheric continuum,SPAC)における水移動の原動力となります。さらに、無機栄養分の吸収が促進されます。逆に、蒸散はよく晴れた日中に植物体の一時的萎凋(しおれ)を引き起こします。土壌が乾燥し水分が補給されなければ永久萎凋となり、脱水によって枯死に至ります。
枯死にならないためにも、土壌内に安定して水を供給することはとても重要です。
光合成にも「水」が必要?
光合成は、植物が自ら、養分を作り出す活動のことをいいます。一般的に原料としては、二酸化炭素と水が必要と言われています。ただし、根から吸い上げる水のうち、本当に光合成で使われる水の量はほんの一部でしかありません。光合成で分解されて酸素になる水の200倍以上の量の水が蒸散によって失われます。
一方で、植物が乾燥状態におかれると、蒸散を抑えるために気孔を閉鎖します。気孔が閉じれば、当然二酸化炭素を取り込めずに光合成速度は低下します。このため土壌が乾燥するに連れて、真昼の光合成速度が低下する現象が見られます(下記図)。これは、土壌中の水が減った状態では、特に相対湿度の低下する真昼に気孔が閉鎖して、結果的に光合成速度が下がることを示しています。
土壌内を適湿に保つことでムラのない生育へ
植物における「水」の役割とその重要性について記載しました。
土壌内を適湿に保つことで、植物にストレスをかけない安定した生育が実現できます。
これを手潅水や、タイマー潅水でやることも可能ですが、大きな労力がかかります。
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参照記事:
一般社団法人農山漁村文化協会「新版 野菜栽培の基礎」
園池 公毅「光合成とはなにか―生命システムを支える力」