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自動潅水の種類と使い分け方

機械化により時間や条件に沿って潅水を自動化する自動潅水は、規模拡大や省力化のためには必須のものとなっています。本記事では、自動潅水の種類をご紹介いたします。

【ハウス栽培】潅水システムの種類と選び方。散水潅水、噴霧潅水、点滴潅水と必要器材をご紹介

点滴チューブを用いた自動潅水

点滴チューブとは、チューブにあいた点滴孔からポタポタと水滴をだすことによって潅水する潅水チューブです。少量ずつ、均一に水やりができることが点滴チューブを使う最大のメリットです。

 

また点滴チューブは植物を直接濡らすことが無く、ハウス内で用いる際には室内が過湿になりづらい特徴があります。また土壌を固くしたり、水みちを作ることも少なく、土中の空気層を維持しやすい特徴もあります。

 

点滴チューブを用いた養液土耕栽培の特徴の一つに少量多潅水があります。点滴チューブの場合、1回に与える潅水量は少量となり、潅水回数を増やすことで潅水量を確保します。また点滴チューブを用いることで、チューブの水源側の根本と先端の潅水量の差をできるだけ減らし、潅水のコントロールが行いやすくなります。

 

点滴チューブによる少量多潅水とタイマーや制御装置(日射比例など)による自動潅水は、養液土耕栽培の基盤技術のひとつとなっています。点滴チューブによる少量多潅水では、土壌の保水量に対し過剰な潅水とならないよう潅水時間を設定すれば、余剰潅水を抑えることができます。肥料分の節約にも有効となります。また潅水回数を増やすことで、土壌の水分状態を比較的安定化することも可能です。そのためタイマーや制御装置による電磁弁開閉機構が必要となりますが、手作業では不可能なきめ細かな潅水によって土壌水分率を一定範囲に保つことが可能となっています。

潅水チューブを用いた自動潅水 

潅水チューブにはポリエチレンなどの樹脂製チューブに孔が等間隔で開けられたものが多くみられます。また硬質のチューブを用いる場合もあります。さらにノズルを取り付けるタイプもあります。点滴チューブによる潅水に比べ、潅水チューブでは水は細かな粒子となって広範囲に吹き出すことから、散水と呼ぶこともあります。

 

潅水チューブによる潅水(散水)は、点滴チューブによる潅水とは異なり、面的なものになります。そのため作物の根域からずれた範囲に潅水が行われることも考えられ、その場合には潅水と同時に行われる施肥の効率が低下すること、余剰肥料による塩類集積が起こる可能性も考えられます。一方で広範囲かつ大量の潅水も行えることから、水分を多量に必要とする作物(例えばアスパラガスなど)については潅水チューブの利用、もしくは点滴チューブと潅水チューブの併用が考えられます。また点滴チューブによる潅水では補えない通路への潅水を潅水チューブで行う場合もあります。

 

潅水チューブによる自動潅水は、一般的にはタイマーにより潅水時刻や潅水一回当たりの時間などを設定し行う形になります。また一度に大量の潅水を行い、何日かに一回の潅水になる場合や、設備類を簡略化する場合には、自動潅水ではなくバルブ等の操作による手動潅水を行うことも多くみられます。

潅水チューブによる通路潅水 (点滴チューブによる株元潅水も併用している)

頭上潅水による自動潅水

頭上潅水は、ハウス内の加湿、葉面散布などに用いるもので、霧状の散水を行います。誘引線やハウスのブレスの位置に吊るすなどして設置し、上方に向けて散水します。頭上潅水での自動潅水は、一般的にタイマー制御により、潅水時刻や潅水一回当たりの潅水時間を設定し行われます

頭上潅水 ミストエース20葉水くん(住化農業資材株式会社 製品情報サイトより)

スプリンクラーによる自動潅水

ミカンやブドウなど果樹栽培での根圏は広く、スプリンクラーで広範囲に大量の潅水を一挙に行う方法が一般的です。ブドウのハウス栽培でもスプリンクラー潅水が多く行われています。ミカンのハウス栽培でも大量の潅水が必要となりますが、スプリンクラーの他、潅水チューブや有孔潅水パイプも用いられています。これらの潅水資材は、スプリンクラーに比べ、よりスポットでの潅水が可能です。ミカンのハウス栽培は露地栽培より栽植密度を高めることが多く、潅水ムラを防ぐためと言えるでしょう。果樹栽培でのスプリンクラーによる潅水は手作業によるものが多く、自動潅水の例は比較的少ないと思われますが、大規模になれば潅水エリアを分割して順番に潅水を行うなど、自動化も必要になります。

養液栽培と自動潅水

養液栽培には、土壌のかわりに固形培地を用いる固形培地耕と、培地を用いない水耕があります。前者には用いる培地の種類によりロックウール栽培、ココピート栽培などがあり、後者には養液を与える方式により、たん液型水耕、NFT、噴霧耕などがあります。いずれも肥料分の含まれた培養液を植物に与えて栽培するものです。

 

固形培地耕は、玄武岩を原料とした人工培地のロックウールを用いるロックウール栽培と、ヤシガラを原料としたココピートを用いるココピート栽培が主要な方式です。他にも様々な培地が開発・利用されています。

 

ロックウール栽培でもココピート栽培でも、スラブと呼ばれるプラスティックフィルムで包装された培地の塊を用意し、栽培ベンチの上に等間隔に配置します。さらに植物の苗を植えたポットと呼ばれる直方体状の培地をスラブの上にこれも等間隔に置き、定植します。固形培地耕での潅水はオンラインドリッパーと呼ばれる点滴潅水用のノズルをポットに挿して行う方法が一般的です。

 

固形培地耕での潅水はすべて自動化されており、一般には日射比例制御が行われています。また培地の水分率を携帯の計測機で測定し、潅水量などを調整する場合もあります。据え置き型の培地重量計を用い、潅水開始のタイミングを図る方式もみられます。

ロックウール栽培でのオンラインドリッパーによる点滴潅水

まとめ

自動潅水について、潅水の方法などによる種類をご紹介いたしました。実際には、作物、栽培方法、土壌条件などに応じ、適切なものを選定することになります。本記事をご参考に、おのおのの特徴をもとに自動潅水について検討をいただければと思います

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