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ハウスの換気装置について③ ー強制換気装置ー

ハウスの換気装置には、大別すると自然換気装置と強制換気装置があります。前者はハウスの開口部に開閉装置を設け、その開口面積などを調整しながら換気を行うものです。また後者はハウスの妻面などに設置した換気扇による通風で換気を行うものです。本記事では、強制換気装置の概要と特徴などについてご紹介します

 

強制換気装置の構造

 

天窓換気装置や谷換気装置、また側窓換気装置といった自然換気装置に対し、電動式の換気扇を用い、人為的な気流を発生させることで換気を行うものを強制換気装置と呼びます

 

強制換気装置は、ハウスの一方の妻面もしくは側面に大型の換気扇を設置し、もう一方の面に開口部を設け、外部からの吸気と外部への排気を行います。また合わせてハウス内にも横方向の気流を生じさせる働きがあります

ハウス妻面に設置された換気扇(非稼働時でシャッターが閉じた状態)

強制換気装置の換気扇は直径1m程度のものを用いることが多く、取付枠を妻面に設置して換気扇を枠内に組み込む工事が必要になります。また反対側の面には吸気口が設けられます。安全確保のため換気扇の室内側には防御用のメッシュ等が、室外側には開閉式シャッターが取り付けられ、シャッターの開閉は自動化されています。

ハウス妻面に設置された大型換気扇(稼働時でシャッターが開いた状態)

強制換気装置の効果と気化冷却

 

強制換気装置は換気扇の一定の風量により、自然換気装置に比べ安定した換気量を確保することが可能です。特に強日射でハウス内温度が上昇する際に熱気を排出することで、温度低下効果を狙う使い方がされます。ただし外気温度より低下させることはできないため、より低下させたい場合にはハウス内にミスト装置を設置することで気化冷却効果も同時に狙う場合もあります。気化冷却効果は相対湿度が低い場合に有効となるため、強制換気により室内より乾燥した外気を導入することで、より効果的になるものと考えられます。

ミストノズルからのミスト噴霧

また類似のものとしてパッドアンドファン方式があります。これは吸気側にパッドと呼ばれる波型のセルロース紙を積層接着した厚さ10cm程度のもの文献1)を設置し、ここに水を滴下することで気化冷却を行います。パッドアンドファンではミスト装置のような水滴の噴霧は無いため、植物体が濡れることは無いことの一方で、次項のような温度勾配が発生します。

強制換気によるハウス内の温度低下は、吸気側で大きく、排気側で小さくなり、ハウス内の気流に沿って温度勾配が生じることに注意が必要です。一般的に吸気側と排気側の距離は20~30m程度であるのが望ましいとされています文献2)。またパッドアンドファンでは同距離が40~50mを超えるものは不向きとされています文献1)

強制換気装置と気化冷却を組み合わせた半閉鎖型ハウス

オランダ発祥の技術として半閉鎖型ハウス (semi-closed greenhouse) があります。これは換気扇による強制換気と外気導入を行い、天窓などによる自然換気のウエイトを下げながら効果的に気化冷却やCO2施用も行い、作物の生育に最適な温湿度やCO2濃度を長時間維持しようとするものです文献3)

通常、日中は天窓等の開閉による自然換気が起こるため、ハウス内のCO2濃度を密閉時のように1000ppmなど高くするのは難しいとされています。この問題をクリアする半閉鎖型ハウスでは、強制換気と組み合わせた気化冷却により、換気量を抑制しつつCO2の高濃度施用を可能としており、換気時での光合成の最大化を狙うものです。一般的なオランダ型の高軒高フェンローハウスでのトマト栽培では国内最大収量が5kg/㎡と言われていますが、半閉鎖型ハウスでは7~8kg/㎡程度の国内事例文献4)もみられ、その高い効果が実証されています。

強制換気装置の利用法とバリエーション

強制換気装置は換気扇で排気を行い、反対側の開口部から吸気を行う形式のものが一般的です。この場合は天窓や側窓などの換気窓はすべて閉じ、開口部からのみ吸気がされるように利用します。この場合、ハウス内の気圧は陰圧(外気よりも低い状態)となります。一方で換気扇で外気を吸気し、ハウス内に押し込むように強制換気を行う形式のものもあります。こちらは側窓を多少開けた状態で利用することがあり、ハウス内の気圧は陽圧(外気よりも高い状態)となります。

その他、台風襲来時の被害防止のため、換気扇の排気による陰圧化によって、ハウス全体が強風により引っ張りあげられないようにすることが一般的に行われています。この場合は、必ずしも大型換気扇にはよらず、ハウス妻面上部に取り付けられるような換気扇が用いられています。

外気導入装置

強制換気装置と同様に換気扇による外気導入を行う設備として、近年、外気導入装置の利用が行われています。これは換気扇とダクトを組み合わせたもので、吸気口から換気扇により導入した外気をダクトを通じ畝間や養液栽培のベンチ近辺に送風するものです。排気は天窓や側窓などの開口部で行われます。

外気導入装置の模式図

切替弁などにより、外気導入を行う使い方と、屋内循環を行う使い方を選ぶことができる。

 

外気導入装置のダクトに小孔が多数開けられており、作物群落付近にまんべんなく外気を排出します。外気温がハウス内温度より低い場合は作物に直接の冷却効果があり、また群落からの蒸散とダクトからの通風の組み合わせによる気化冷却効果も期待されます。畝ごとに換気扇を設置することは現実的には困難なため、温風暖房機に接続された送風ダクト(親ダクトから分岐する畝間への子ダクト)を利用しながら、温風暖房機に外気が直接吸われるような構造も考案されています。

 

今後の展開

 

強制換気装置には大型換気扇を単体で用いて換気を安定的に行う使い方の他、ミスト装置などと組み合わせ気化冷却により冷房効果を狙う使い方や、さらに半閉鎖型ハウスとしてCO2の高濃度施用もあわせて行い飛躍的な高収量を狙う使い方もみられます。電気料金が高騰する中で、消費電力が大きい大型換気扇を多数運転することはコスト面で厳しいことがあります。強制換気装置の導入に際しては、設備導入コストやランニングコストと導入効果について十分に検討する必要があるでしょう。

参考文献

  1. 石井雅久、「冷房」、施設園芸・植物工場ハンドブック 第3章 温度制御(2015)
  2. 石井雅久、「強制換気」、施設園芸・植物工場ハンドブック 第6章 換気・気流制御(2015)
  3. 岩﨑泰永他、半閉鎖型管理(SCM)による施設果菜・花き類 の生産性向上、農研機構野菜花き研究部門
  4. 世界最多収量を目指す最新鋭の施設園芸(有限会社アグリマインド明野菜園)、大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例集(2015)
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