ブログ

自動潅水装置の導入|手順や施工、資材の選び方を解説

施設の規模拡大や省力化のためには、自動潅水装置の導入による潅水の自動化が必要となるケースが多くあります。そこでは、従来からある手動潅水の設備を自動化するケース、新設の場合に新規で自動潅水装置を導入するケースなどが考えられます。本記事では、自動潅水装置の導入における検討項目について、ご紹介します。

潅水方法の検討

ハウス栽培における潅水方法には、点滴チューブによる少量多潅水、潅水チューブによる潅水、頭上潅水などがあります。

点滴チューブによる少量多潅水では、余剰潅水や肥料の節減につなげることができます。これは土壌の保水量に対し過剰な潅水とならないよう潅水時間を設定するもので、元々はイスラエルの乾燥地帯で生まれた潅水技術であり、節水型農業の基盤技術となっています。

また少量多潅水では、潅水回数を増やすことで、土壌の水分状態を比較的安定化することもできます。そのためタイマーや制御装置による電磁弁開閉機構が必要となりますが、手作業では不可能なきめ細かな潅水によって土壌水分率を一定範囲に保つことが可能となっています。

少量多潅水とは何か。特徴とメリットをご紹介

 

なお、潅水チューブによる潅水では点滴チューブによるものとは異なった潅水の形態となります。例えば一度に多くの潅水を行えること、また潅水チューブの種類によっては広範囲に潅水を行えることなどがあります。点滴チューブによる潅水ほど細密で頻繁なものではなく、1日に1回〜数回程度行えばよい場合もあります。そのため手動による潅水操作でも可能な場合もあり、その際には自動化の必要性を吟味する必要があるでしょう。

ハウス栽培での潅水方法について一般的な内容を紹介した記事もありますので、ご参照ください。

【ハウス栽培】潅水システムの種類と選び方。散水潅水、噴霧潅水、点滴潅水と必要器材をご紹介

潅水量の検討 

 

点滴チューブ、潅水チューブのそれぞれの利用において、1日に植物が最大でどの程度の潅水を必要とするかを想定し、潅水量を検討することになります。作物ごとの必要潅水量についての明確な指針はなく、環境条件、生育状況、土壌条件などの影響も受けるため、同様な栽培条件での事例を確認する必要もあると考えられます。

 

一方で作物1株当たり、1日当たり最大でどの程度の潅水量が得られるかを事前に計算することができます。これはチューブからの吐出量(チューブ孔当たり)、孔数(チューブ長と孔ピッチより算出)、1日の潅水時間から算出する形になります。1日の潅水時間は、潅水の系統数などにより制約を受ける場合があります。算出された最大の潅水量と作物が必要とする潅水量を比較し、十分な潅水能力があるかを判断します。

 

点滴チューブの選び方〜チューブの構造や仕様から、必要流量の計算方法まで〜



潅水系統の検討

ハウス栽培での潅水における基本の配管を図に示します。これは手動潅水の場合で、各潅水系統にある手動バルブを順に開閉して潅水を行うものです

また次の図では、手動バルブの代わりに電磁弁を用い、制御装置によって潅水を自動化するものです。制御系統の設備や配線が必要になりますが、配管そのものは手動のものを利用します。

注意が必要なこととして、手動潅水の場合、手動潅水バルブを数多く設置して、畝ごとの潅水を行っているケースがあることです。この場合は、手動潅水バルブが多い場合には、いくつかの手動バルブの系統をまとめて電磁弁による潅水に置き換える必要もあるでしょう。そうしないと、潅水制御の系統が多くなり、制御そのものが難しくなるためです。

なお電磁弁には口径(20A、25Aなど)があり、大口径ほど流量を多くすることが可能です。1つの電磁弁でまかなう潅水量を計算し、口径選定の参考にします。

配管、ポンプなどの送水設備

電磁弁の口径や個数と配置により、配管の設計を行います。1系統当たりの流量をチューブの仕様や長さなどから計算、また系統数から1系統の潅水に割ける時間を計算し、その時間内に所定の流量を確保できるポンプ及び主要配管径などを選定する形になります。

また新たに点滴チューブによる潅水を行う場合には、詰まり防止を考慮し、フィルター類を増強することも考えられます。

養液土耕栽培システムの潅水設計。点滴チューブやポンプ、タンクの選び方

ゼロアグリ
ゼロアグリ

制御装置の選定

潅水作業の自動化を中心に考えている場合には、まずタイマーによる潅水制御を検討すべきでしょう。比較的安価で機能もシンプルな制御装置が販売されています。

 

またタイマー制御ではカバーしきれない日射量の変動に応じた自動潅水を考えている場合には、日射比例潅水の制御装置を検討すると良いでしょう。天候に応じたフレキシブルな自動潅水が可能になります。

 

ゼロアグリは日射比例潅水を基本としながら土壌水分量も加味し、作物がどの程度の蒸散をしているかAIによる予測を行っています。これにより天候の変化だけでなく作物の生長や土質も加味した精密な潅水を自動化しています。

 

ハウス栽培における自動潅水装置(自動潅水システム)の種類と選び方

おわりに

自動潅水装置の導入における検討事項を順を追ってお示ししました。個々の機器資材については、より具体的な設計や選定が必要となりますので、リンク先の記事などをご参照いただければと思います。

タイトルとURLをコピーしました