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【農業用ハウス】ビニルハウス・栽培施設の仕様設計のポイント~③実践編「環境制御や潅水装置など付帯設備」~

ハウスや、それに付随する環境制御や潅水装置などの施設を新規導入する際には、仕様について多くのことを決める必要があります。補助事業を使用することも多く大きな投資となるハウスの新設。企画や設計を誤ると完成後に軌道修正することは難しくなります。今回は、失敗を極力抑え費用対効果も得られるよう、新規導入の際のポイントを3記事に分けて整理しました。


第3回は実践編の続きで、ハウスの付帯設備として環境制御や潅水管理に関するものについて、仕様策定の具体的な考え方をお示しします。

【農業用ハウス】ハウス・栽培施設の仕様策定のポイント~

 ①基本&準備編

 ②実践編「ハウスの設計」

 ③実践編「環境制御や潅水装置など付帯設備」 ←この記事

環境制御関連の付帯設備

ハウス付帯設備による環境制御には暖房と冷房、送風、CO2発生装置などの機械で積極的に行われるものと、カーテン装置により間接的に保温や遮光・遮熱が行われるものがあります。さらに前述の天窓などとの換気装置など、実際には複数の機械や設備を組み合わせて行うため、複雑な制御や動作が行われます。

①暖房・冷房・送風・カーテン等の空調装置

暖房装置の仕様は、ハウスのタイプやサイズと当地の気象条件、栽培する作物の適正な栽培環境(温度範囲)などから定めます。具体的には暖房能力(最低の外気温と求められるハウス内の最大温度を定め、その差を暖房により埋める能力)を第一に決める必要があります。またハウス面積が大きくなると複数台の暖房装置が必要となり、温度ムラのないような適切な配置が求められます。

冷房については日中の細霧冷房も一般的なものになっており、冷房まで至らなくとも加湿のための噴霧を行う簡易な装置もみられます。これらの仕様を決めるには具体的な設備設計を伴いますが、基本設計の段階では、まずはおおよその冷房目標温度などを設定する必要があるでしょう。また最近では、ヒートポンプによる夜間冷房が用いられるようになり、暖房や除湿などと兼用で利用可能となっています。

カーテン装置については、夜間の最低温度に応じたカーテンの保温性能(材質、層数)、遮光・遮熱に影響がある遮光率(%)、通気性や吸湿性に影響がある材質(フィルム、不織布、織物、吸湿性のPVCなど)を仕様とします。

送風装置として循環扇と換気扇があります。循環扇はハウス内に気流をつくり、温度ムラの軽減、病害の発生抑制などの効果があります。循環扇は間口ごとに何台も配置するよう仕様に入れる必要があります。また畝間やベンチ下などに細いポリダクトを設置し、作物への直接の送風や暖房、CO2施用などを行う方法もみられます。循環扇は主に作物の群落上部に気流をつくるものですが、ポリダクトによる送風は群落内に気流をつくるもので、作物への直接の効果が期待できると考えられます。

換気扇にはハウス内の温度低下のために強制換気を行うものがあり、循環扇より送風能力が高い大口径のものになります。循環扇、換気扇とも設備設計が必要となりますが、おおよその能力、台数と配置を仕様として決めます。

 

なお台風対策として換気扇による排気を行い、ハウス内に陰圧を掛けることで強風によりハウスが持ち上げられないようにする方法があります。強制換気ほどの送風能力は必要ありませんが、特に鉄骨ハウスでは必須の仕様となっています。

循環扇

②CO2発生装置

近年の果菜類の栽培では、CO2施用は標準的な技術となっており、主に灯油やLPガスの燃焼によるCO2発生装置が利用されています。原料は高価ですが発熱がなく高温期の利用も可能な液化炭酸ガス(生ガス)の利用も一部では行われています。
CO2発生装置(ネポン グロウエア製品サイトより)

③環境制御装置

上記①②の装置類には、おのおのオンオフやタイマー、サーモスタット機能などを持つ制御盤類が付属しています。しかし設備数が増えると操作が複雑になるため、ひとつの制御装置で一括して管理するのが便利となります。またセンサー類を一本化することで、制御に統一感が生まれます。さらに温度と湿度、温度と日射量など、複数の要因を関連づけて制御するなど、より高度な手法をとることも可能となります。

環境制御装置にはこうした機能があり、近年では作物の光合成や転流を促進するための温度やCO2濃度の制御方法なども取り入れられています。また入門機から複雑な制御を行う高機能なもの、大規模施設に対応し基盤の増設が可能なものなど様々なタイプがあります。自分の栽培技術や目標とする収量などを踏まえタイプを選定します。

その他、ハウス内環境の見える化を行うため、温湿度、日射、CO2濃度等の計測と記録、さらにはクラウド経由でのデータ閲覧を行う、環境計測装置やサービスの利用が進んでいます。これらは単独での導入も可能ですが、環境制御装置と一体化したもののもみられます。最近では、グループで環境計測装置を統一的に導入し、クラウド経由でデータを比較して技術向上を図る利用方法も注目されています。

環境制御装置(誠和。プロファインダーNEXT80 製品サイトより)

潅水管理関連の付帯設備

潅水管理に関する付帯設備は、養液土耕栽培と養液栽培向けに大別されます。低コストで

生産性や省力性を上げたい場合には養液土耕栽培から、土壌病害などの問題があり、生産性や省力性をさらに高めたい場合には養液栽培も検討するのが良いでしょう。

①養液土耕栽培装置

養液土耕栽培は、灌水と施肥を同時に行う技術で、液肥混入機を用いて、的確なタイミングと量による灌水施肥を行うものです。

養液土耕栽培で用いられる栽培装置として、原水装置(井戸ポンプ、原水タンク、濾過装置など)、送水ポンプ、灌水チューブ、液肥混入機、制御装置類(センサー、電磁弁、コントローラーなど)があります。制御装置類を一切使わず、手動バルブ操作により灌水の入り切りを行う方法もありますが、地上部環境制御の自動化を進めながら、潅水による地下部環境制御を手動で行うことはバランスを欠くものかもしれません。

養液土耕栽培での設備仕様検討の詳細は、こちらで紹介していますので、ご参照ください。仕様策定では作物がどの程度の灌水量を必要とするか、その情報をもとに送水能力などを決める必要があります。また灌水制御方法には簡単なタイマー制御から日射比例による自動制御、さらにゼロアグリによる土壌水分センサーを用いたAI灌水制御などがあります。これらの制御方法の比較は、こちらでご紹介しております。

ゼロアグリ制御盤と液肥混入ユニット

②養液栽培装置

養液栽培では、養液土耕栽培で用いる原水装置や液肥混入機などの他、栽培ベッド(栽培ベンチ、ハンギングガターなど)、人工培地(ロックウール、ココピートなど)、ECセンサーや培地重量センサーなどの設備、機器、資材が必要となります。

養液栽培は土壌消毒や土壌改良が不要で省力的であり、作替えの期間も短縮され収穫期間も延長でき、また管理のマニュアル化も容易です。一方で設備投資がかさむため、養液土耕栽培に比べ一層の増収が必要となります。そうした点も踏まえ、養液栽培の導入を検討すべきです。なお栽培ベッド等を設置する際に、定植位置が高くなるため、その分のハウスの軒高が必要となります。また排水を確保するため栽培ベッド等に傾斜を持たせる必要があります。

養液土耕栽培と養液栽培の比較をした記事は、こちらです。

排液流量計を用いた潅水制御(ゼロアグリ/実証実験)

仕様策定と予算・導入順序

付帯設備に関して、ご紹介したような多くの機能を求め仕様に織り込めば、全体の予算は上昇しますので、上限を定める必要があります。そのため概算の見積を行い、最近の施工事例などを調べることで、ある程度の予算の目安をつける必要もあるでしょう。

また導入順序を考え、すべてを一括して揃えるのではなく、一期工事、二期工事など段階的に設備導入を図る考え方もあります。その際、二期工事で追加する設備が問題なく設置できるよう、一期工事で設置場所等を確保することがポイントとなります。また一期工事で栽培を開始し、栽培技術を習得しながら収益を蓄積し、二期工事の追加投資を行ってさらに生産や販売を拡大するという経営方針も必要となるでしょう。

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