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【農業用ハウス】新設ビニールハウス・栽培施設の仕様設計のポイント~②実践編「ハウス」~

ハウスや、それに付随する環境制御や潅水装置などの施設を新規導入する際には、仕様について多くのことを決める必要があります。補助事業を使用することも多く大きな投資となるハウスの新設。企画や設計を誤ると完成後に軌道修正することは難しくなります。今回は、失敗を極力抑え費用対効果も得られるよう、新規導入の際のポイントを3記事に分けて整理しました。

第二回は実践編として、ハウスの仕様策定について具体的な考え方をお示しします。

【農業用ハウス】ハウス・栽培施設の仕様策定のポイント~

 ①基本&準備編

 ②実践編「ハウスの設計」 ←この記事

 ③実践編「環境制御や潅水装置など付帯設備」

①ハウスのタイプ

ハウスのタイプには様々なヴァリエーションがあります。以下にいくつか分類をしてみます。

構造的には、簡易なパイプハウス(地中押し込み式パイプハウスとして分類)、と基礎を持つ鉄骨ハウスに分類されます。

強度的には、大口径のパイプを補強材として用い強風などへの耐候性を持つもの、鉄骨ハウスでも強度を高めた低コスト耐候性ハウスなどがあります。

形状的には、1棟が独立した単棟ハウスと連結した連棟ハウス、換気性が高くオランダ式誘引方法(ハイワイヤー栽培)にも対応した高軒高ハウス(軒高3.5m以上)、1間口に2~3個の屋根を持ち千鳥換気窓を配置したオランダ式高軒高ハウス(フェンローハウス)などに分類されます。

また換気窓の形状でも分類が可能で、屋根の上部に換気窓(天窓)を持つ天窓換気方式、連棟屋根の谷部に巻き上げ式換気窓を持つ谷換気方式、ハウスのサイドに巻き上げ式換気窓を持つ側窓換気方式があります。

以上のような分類と組み合わせよりハウスのタイプが決まってまいります。実際は作物と栽培方法に適したハウスのタイプがあって、ハイワイヤー栽培が多く行われるトマトやパプリカでは高軒高ハウスやフェンロー型ハウスの導入が多くみられます。しかしこれらは高価であり、軒高を低くするなどでコストを抑えることもあります。

連棟ハウス

②サイズ

ハウスの仕様で重要なのは、前述の軒高の他、間口があり、施設の生産性に影響を及ぼします。これは屋根を支える中柱の間隔のことで、パイプハウスでは5.4m、6m、7.2mなどのサイズがあります。また鉄骨ハウスでは6m、8m、9mなど間隔が広がります。さらに大屋根型ハウスという広間口のハウスでは12m~24mといった大きなサイズのものもあります。

間口サイズにより、作物を植える畝やベッドの間隔と数が規定されます。作物と栽培方法により適正な畝・ベッド間隔があるため、畝・ベッドが過不足なくピッタリと間口に配置されるのが望ましいと考えられます。10cm単位で間口サイズにこだわる場合もありますが、これは施設の生産性(単収:㎡や10a当たりの収量のこと)と作業性に影響を及ぼすためです。

間口サイズでの注意点:間口が広すぎて畝・ベッド間隔に余裕が生まれたり、間口と畝・ベッド配置がピッタリでなければ単収は低下します。しかし畝・ベッド間隔が狭いと作業性が低下したり、作物への採光性も低下して生産性にも影響を及ぼします。

間口によって畝やベッドの数が決まります。

③採光性

前述の間口サイズの他、施設の生産性に影響を及ぼす仕様として、採光性があります。これには被覆資材(外張フィルム)の光線透過率、屋根の骨材の幅や数、ハウス内部の影(骨材、カーテン資材などによる)などが関係します。

俗に言う「明るいハウス」は、骨材が細いものや数が少ないもの、軒が高いものなどがあります。骨材やパイプの強度を高め、本数を減らすなど、設計の工夫によるものがみられます。

シンプルな雨よけハウス

④耐候性

鉄骨ハウスでは一般の建築物と同様に構造計算が可能で、基礎、鉄骨の強度や本数、トラス等の補強材の配置などから風や積雪に対する耐久性・耐候性が計算されます。その際に最大風速や積雪荷重といった負荷を設定し、他に再現期間(何年に一回、最大の負荷が発生するか?)を設定して、耐候性を算定します。これら負荷の設定がハウスの耐候性に関する仕様の基礎となります。

⑤外張り被覆資材の種類

ハウスの外張被覆資材を大別すると、軟質プラスティックフィルムと硬質プラスティックフィルム、ガラス、その他に分類されます。

軟質プラスティックフィルムには、農業用ビニール(農ビ)と農業用ポリオレフィンフィルム(農PO)に大別され、近年は寿命が3~7年程度と長く張り替えの手間が少ない農POの需要が増えています。農ビは長年利用されてきた被覆資材で、保温性や柔らかさによる耐候性、透明性などの特徴があり、根強いファンもいますが、1~2年で張り替える必要があり、急激に利用が縮小しています。

硬質プラスティックフィルムには15年以上の長寿命で透明性も高いフッ素樹脂フィルムがあります。高価な被覆資材ですが、張り替えの負担減と作物の光合成に必要な光をより多く取り入れる必要性から、特に高軒高の鉄骨ハウスでの利用が多くみられます。

被覆資材の仕様として、耐久性に影響のある厚さ、病害虫防除効果などのある紫外線(UV)カットタイプ、強光をやわらげ影を作らない散乱光タイプなどがあり、用途に応じた選定が必要となります。

③実践編「環境制御や潅水装置など付帯設備」へ

重要なフィルムの選択
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