ブログ

地方自治体の補助事業について②ー各都道府県や市町村での補助事業例

地方自治体の補助事業には、都道府県単位のものと市町村単位のものがあります。本記事では都道府県(地方自治体の補助事業について①の続き)と市町村での補助事業の実際の例などについて紹介します。

山梨県での補助事業の例

 

山梨県では「山梨県施設園芸等経営強化支援事業費補助金1)として、省エネ、省力化、生産性向上を実践する取り組みへの支援を行っています。対象は施設園芸の農業者と法人で、品目は野菜、果樹、花きとしています。対象となるものは、省エネ機器資材(ヒートポンプ、環境制御装置、多段サーモ、循環扇、カーテン、送風ダクト、バーナーノズル交換、暖房機器点検)、省力化機器(自動換気装置等)、炭酸ガス発生装置、遮熱遮光資材があげられ、補助率は2/3以内です。

 

山梨県は高冷地での果樹や花きの施設栽培が盛んであり、燃油や燃料価格の高騰の経営への影響が特に大きいと思われる地域です。国が行う施設園芸等燃料価格高騰対策とあわせ、関連する機器や資材の導入整備への支援が行われています。

 

高知県での補助事業例

高知県は人口減少が著しい中で、施設園芸を主要産業と位置付け、ナスやピーマンを中心とした果菜類や、ニラ、ショウガ、ミョウガなどの施設栽培が盛んに行われています。そのためハウスや環境制御装置などの施設整備への県の補助事業も数多く取り組まれ、近年はデータ駆動型農業を実現するIoPクラウド(Internet of Plants)2)と呼ばれるクラウドサービスの開発と普及が進められています。また「高知県環境制御技術高度化事業費補助金3)として、環境制御技術やデータ駆動型農業の導入実践に必要な機器装置類への導入支援も補助率1/2以内などで継続的に行われています

そうした中、高知県でも「園芸用ハウス等リノベーション事業参考文献4)として既設ハウスの補強や被覆資材などの資材、また環境制御装置や日射比例自動潅水装置など内部設備の導入、IoPクラウドとの通信装置などについての助成を行っています。これはハウス建設費の高騰にともない、新設ハウスの減少が見られる中、ハウス面積と生産量の維持を目的とした事業と考えられます。補助率は1/2~1/3以内などです。また、「次世代型ハウス省エネルギー設備等導入推進事業5)として、物価(施設資材費等)やエネルギー価格の高騰に対し影響の受けにくい経営構造への転換をはかるよう、高効率、省エネなどの先進設備の導入への支援を行っています。これはコジェネレーション設備(LPGエンジンによる加温と発電)、水熱源ヒートポンプ(空気熱源のものよりエネルギー削減が期待される)、太陽光発電設備+蓄電池など、従来の施設園芸での導入があまりみられないものを補助対象に考えているものです。補助率は同様です。

佐賀県での補助事業例

 

佐賀県は、「さが園芸888整備支援事業」として、令和10年の園芸産出額888億円達成を目標に、施設園芸や露地園芸への支援を広く行っています。「園芸ハウス整備、機械の購入等に対する支援一覧(ハード事業)」6)では、ステップアップ経営者育成対策(認定農業者などへの規模拡大支援)、新規就農者育成対策、園芸団地整備対策などのメニューでハウスや付帯設備、共同利用機械施設等の導入に1/2~1/3以内の助成が行われています。特に、ヘクタール単位の大規模施設が園芸団地として整備されています。また、「収量・品質の向上、新たな産地作りに対する支援一覧(ソフト事業)」7)では、「ハウス内環境「見える化」促進事業8)として、ハウス内環境の見える化や環境データにもとづく収量向上の取組について、環境測定装置の導入やデータ収集分析の費用について1/2以内の助成が行われています。

市町村での補助事業例

 

これまで施設園芸が盛んな都道府県での補助事業の例をご紹介してまいりました。市町村においても地域を振興する施策のもと、補助事業が組まれる例も多くあります。例えば農業特区で有名な兵庫県養父市では、「養父市企業等振興奨励制度」9)として、様々な業種を対象に助成をする中、農業、林業(野菜作農業に分類される植物工場に限る)も助成対象に、事業所等設置助成金や雇用促進奨励金の支援を行っています。

 

その他の例として、ルートレック・ネットワークスも関係する長崎県壱岐市での「雇用機会拡充事業」10)をご紹介します。これは特定有人国境離島地域と呼ばれる全国で 71 箇所が指定された離島での雇用増を伴う創業や事業拡大を行う民間事業者への助成を行う事業になります。農業や施設園芸を専門に対象とした事業ではありませんが、ルートレック・ネットワークスが以前よりゼロアグリのアスパラガス栽培への導入を壱岐市で進めていた中で、本事業によりアスパラガス高畝栽培11)やゼロアグリを含むスマート農業技術、壱岐市のノウハウなどを組み合わせ、「省力化×高収益」を目指せる壱岐市版のアスパラガス高畝栽培モデルを確立するよう参画中です12)ルートレック・ネットワークスは補助事業の事業主体として、栽培モデルの実証と新規就農者の収益確保や雇用の増大を目指しています

今後の展開

 

ご紹介した地方自治体の補助事業の例は、全体のごく一部のものです。各自治体のWEBサイトには、こうした補助事業の概要紹介と公募要領や実施要領が掲載されています。補助事業の活用に際しては関係する自治体の情報を継続的にウォッチする必要があるでしょう。燃油価格高騰や資材費高騰など、施設園芸を取り巻く環境は年々厳しさを増しており、特に施設園芸の主産地域ではこうした困難な状況に対しての施策として今後も様々な補助事業が組まれるものと考えられます。

参考文献

1)「山梨県施設園芸等経営強化支援事業費補助金」のご案内、山梨県

2)IoP Next 次世代 Internet of Plants

3)令和4年度高知県環境制御技術高度化事業費補助金について、高知県農業振興部農業イノベーション推進課

4)高知県園芸用ハウス等リノベーション事業費補助金交付要綱、高知県農業振興部農業イノベーション推進課

5)次世代型ハウス省エネルギー設備等導入推進事業、高知県農業振興部農業イノベーション推進課

6)園芸ハウス整備、機械の購入等に対する支援一覧(ハード事業)、佐賀県農林水産部園芸農産課

7)収量・品質の向上、新たな産地作りに対する支援一覧(ソフト事業)、佐賀県農林水産部園芸農産課

8)【公募】令和5年度『ハウス内環境「見える化」促進事業』の事業実施主体を募集します、佐賀県農林水産部園芸農産課

9)養父市企業等振興奨励制度、養父市役所

10)令和5年度壱岐市雇用機会拡充事業第1回公募結果について、壱岐市

11)アスパラガスの養液土耕栽培について ‐アスパラガス栽培での潅水と養液土耕栽培の実際‐、ゼロアグリブログ

12)AI潅水施肥システムのゼロアグリ、壱岐市の雇用機会拡充事業に採択 〜アスパラガス栽培等スマート農業の産地形成へ〜、ルートレック・ネットワークス、PR TIMES 2023年4月5日付け

タイトルとURLをコピーしました