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地方自治体の補助事業について①ー国補助事業の都道府県での計画認定、各都道府県での補助事業例

地方自治体の補助事業には、都道府県単位のものと市町村単位のものがあります。本記事では都道府県での補助事業の実際の例などについて紹介します。

国庫補助事業の都道府県での計画認定

国の大型補助事業の産地生産基盤パワーアップ事業では、都道府県が窓口となり国(地方農政局等)との協議を行います。また都道府県では市町村より実際の事業計画(市町村における地域協議会等が作成した取組主体事業計画)の申請を受け、計画内容の審査や助言指導を行います。その際に、都道府県ごとの産地づくりや産地強化に関する基本方針に事業計画が合致するものかなど、検討がなされます。また具体的な事業の取組要件についての確認もなされます。計画書には、施設整備に関する仕様書、見積書、事業費積算根拠などの設計資料、事業費の費用対効果分析、施設の規模算定根拠、図面類など多くの資料や設計図書が必要になります。さらに計画に対し、様々なポイント評価(販売額、作付面積、生産コスト、輸出、労働生産性など)がなされ、申請の各計画での優先順位付けや予算配分がなされます。

熊本県農林水産業振興補助金等交付要項1)では、熊本県におけるこうした事業計画の審査方針や体制など詳細が記載されています。県の基本方針の例として、野菜について以下の記載があります。

「施設野菜での高度環境制御栽培施設や省エネルギー機器等の導入による販売額の向上及び生産コストの削減、露地野菜での播種から収穫・運搬までの機械化一貫体系の導入による生産コストの削減を図る。また、野菜の集出荷・選果施設の再編整備を推進することによって集出荷コスト等の削減や契約栽培の割合の 向上を図り、高収益・低コスト化に向けた産地強化を実現する。 」

このように、施設園芸の野菜生産現場での高度環境制御技術や省エネ技術と機器類の導入による収益向上や生産コスト低減が基本方針として掲げられています。国庫補助事業の産地生産基盤パワーアップ事業では、県の方針の元に事業計画の審査や指導がなされ、評価や予算配分が行われる仕組みとなっています。国の補助事業の計画認定業務を都道府県が代行する側面がみられますが、より生産現場に近い都道府県が計画内容を精査することが特徴と言えるかもしれません。

都道府県の補助事業例

 

前述の国庫補助事業(産地生産基盤パワーアップ事業、強い農業づくり総合支援交付金)は予算単位も大きく、選果場や予冷施設、地域の施設園芸団地など、大型施設の建設などに利用される場面が多くみられます。予算配分額も数千万円から数億円単位に及びます。一方で、都道府県単独の補助事業が施設園芸産地県などでは数多く組まれています。こちらは国の施策との関連というよりも、都道府県の農業・園芸施策の元に計画された事業が多くみられます。以下に施設園芸が盛んな都道府県での補助事業(通称で県単事業とも呼ばれる)についての例をご紹介します(最新の情報ではないため、すでに応募期限が過ぎている事業、終了した事業が含まれています)。補助対象、補助要件、補助率、予算額は様々ですが、施設整備や省エネ、新技術導入に係わる助成が多く見受けられます。

宮城県での補助事業の例

宮城県では、東日本大震災以前より大規模施設園芸の普及が始まり、また震災復興事業による大規模施設の建設も進んで来ました。水田地帯などで大面積の建設区画が取れること、夏期冷涼な気候が周年栽培に向いていることなどが、大規模施設園芸の発展要因になっています。同県では「みやぎ大規模施設園芸立地奨励金2)として、そうした既存の大規模施設経営の農業法人や新規参入企業に対し、施設の増設や新設での投下固定資産額に一定の交付率を乗じた奨励金を交付しています。

これはヘクタール単位の大規模施設に対する補助事業となりますが、同県では一般の施設園芸生産者に対する補助事業として「県施設園芸省エネ化推進事業3)を行っています。具体的には、「園芸生産施設の加温に燃料を利用する農業者に対して、施設の省エネ化に必要な資材や機器の購入及び機器のメンテナンスに必要な経費を補助」とあり、被覆資材、循環扇、多段サーモスタットの購入費や暖房機のメンテナンス費に対し上限額内で1/2以内~定額の補助が行われます。また事業の申請書類として、施設の図面や写真、見積書、実施計画書などの提出が求められます。宮城県の太平洋岸には施設園芸地帯も多く、冬期は比較的温暖と言われていますが、内陸部の施設園芸地帯では冷え込みも厳しく、燃油価格高騰の影響が大きいため、こうした省エネに対する支援が補助事業により行われていると言えるでしょう。

栃木県での補助事業の例

栃木県は、とちおとめ、スカイベリー、とちあいかなど、イチゴの生産や育種が盛んで、パイプハウスとウォーターカーテンによる低コストな方式を中心に栽培が行われています。また大玉トマトの土耕栽培を中心にトマトの生産も盛んで、いずれも冬期の豊富な日照を利用し、首都圏を中心とした出荷が行われています。栃木県では施設園芸関係補助事業の募集について4)、WEBサイトでまとめての情報提供を行っています。「園芸大国とちぎづくりフル加速推進事業」として、園芸の主力となるイチゴ、トマトの生産拡大と、それらに次ぐ主力品目の育成などを掲げた事業になります。

本事業には様々なメニューがあり、イチゴについては「「いちご王国・栃木」生産戦略事業

」として、新品種のとちあいかの生産拡大などに必要な施設等の導入についての助成(補助率4/10以内)を行っており、対象として栽培用ハウス、付帯設備(循環扇、換気装置、暖房装置、光合成促進装置、施肥かん水装置、環境制御装置、クラウン冷却装置)などがあげられ、広範な支援がなされています。イチゴでは、他にも県内での苗生産にかかわる同様な施設設備や、苗の増殖など安定供給に向けた経費への支援も行われています。

イチゴ以外では、「施設園芸拡大プロジェクト事業」として、トマト、にら、アスパラガスなどの県が開発したオリジナル品種や、地域の特色を活かした品目の生産拡大のための施設整備等への助成(補助率4/10以内など)を行っており、イチゴと同様な対象への導入支援がなされています。その他にも、にらの新しい生産モデルの現地実証施設(実証栽培でのデータ提供が必要)への助成、環境負荷低減のための新技術の導入にかかわる機器整備や検討会開催経費への助成なども行われています。

栃木県では以上にように、施設園芸の主力品目を対象に生産拡大や新技術導入などへの補助事業が取組まれています。

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千葉県での補助事業の例

千葉県では、多種多用な品目で施設園芸や露地園芸が行われ、イチゴの観光農園や大型直売施設など首都圏に立地した販売や経営の形態も広く営まれています。「輝け!ちばの園芸」次世代産地整備支援事業」5)では、千葉県農林水産業振興計画に掲げた「園芸産出額全国第1位の奪還」の実現のため、生産施設、省力機械、集出荷施設の整備等への支援を行っています。

具体的な事業の内容として、「生産力強化支援型」では、共同利用施設・機会、生産用施設・機械、省エネ機械・装置等の整備への支援を行っています。「園芸施設リフォーム支援型」では、ハウスの改修や展張資材更新等に対し支援を行っています。「スマート農業推進型」では、環境モニタリング装置、炭酸ガス施用装置、ドローン等の導入に対し支援を行っています。 二番目のものは、国庫事業や他の地域でも最近みられるようになった既存施設のリフォーム、リノベーションに対する助成で、ハウスについては法定耐用年数が経過したものへの改修・改良を行って、事業実施後に概ね5年以上の継続使用が可能であること、といった条件が付されています。

千葉県の例では、栃木県のような対象品目の指定はみられませんが、施設園芸に関する施設設備や機器類の導入等への助成が多くあります。補助率はメニューにより1/4~1/3以内になっています。

地方自治体の補助事業について② ー各県や市町村での補助事業例 につづく)

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