ブログ

アスパラガス栽培での施肥について

アスパラガスの成長と収穫のサイクル

 

アスパラガスは多年生の葉茎菜類です。西南暖地を中心に全国でも行われているアスパラガスの半促成長期どり栽培では、地上部から地下茎に養分を転流・貯蔵し、翌年の萌芽に養分を利用し、若茎として春先の収穫が行われます。また若茎から立茎を行って茎葉を成長させ、引き続き夏秋期の収穫を行います。同時に茎葉には光合成産物が蓄積されますが、夏秋期の収穫終了後には茎葉から地下茎への転流が急速に進みます。茎葉が黄化するまで転流が行われ、茎葉を刈り取って冬期の休眠に入り1年のサイクルを終えます。こうしたサイクルが10年程度から長い場合には20年以上も繰り返されるようです。アスパラガスは野菜ですが、こうしたサイクルの長さや休眠を繰り返すことから果樹的な栽培の側面も持つ野菜と言えるかもしれません。またこのようなサイクルにもとづくアスパラガス栽培の年間の生育ステージでは、養分吸収量や施肥量にも変化がみられます

アスパラガスの養分吸収特性と施肥

 

参考文献1)には、長崎県のアスパラガス栽培の研究者である井上勝広氏による、アスパラガスの施肥の考え方について記されています。まず「アスパラガスは多肥型作物であり、根域が深く広いことから施肥反応がにぶく、外観から施肥が多いか少ないか判断がしにくい」としています。葉色や生長点を観察することで施肥状況の判断が可能な作物も多くありますが、アスパラガスではそれは難しいということかもしれません。さらに「そのため多収を狙い多肥栽培を行って肥料焼けを起こし減収となる事例もみられる」とし、施肥量の判断を誤ると減収につながるリスクもあると考えられます。そして最近では「アスパラガスの養分吸収特性を考慮した施肥法が多くの地域で実施されている」としています。これは肥料の多用や土中への過剰集積を避けることにつながります。

 

また同文献には、ハウス半促成長期どり栽培の定植後 1年間の養分吸収量がグラフで示されています(参考文献1)の図1をご覧ください)。ここでは「アスパラガスは窒素とカリの吸収量がとくに多く,次いでリン酸とカルシウムであり、マグネシウムの吸収量はもっとも少ない」としています。これは他の作物ではあまり見られないアスパラガスでの特徴的な吸収特性と言えるでしょう。そして定植1年目の窒素吸収量(10aあたり)は15kgから20kgである、としています。さらにハウス栽培での定植後1年目と2年目の施肥量の目安(牛ふん堆肥を用いる場合)を示しています。そこでの窒素施肥量(10aあたり)は1年目が30kg(リン酸とカリは各々30kg)、2年目が40kg(リン酸とカリは各々20kg)とし、「施肥法としては春期4分の1、夏秋期4分の3の分施が理想的」としています。またこれらはあくまで目安としてであり、定植前や収穫終了後の土壌分析結果をもとに調整が必要、としています。

生育ステージに応じた施肥

 

この、春期4分の1、夏秋期4分の3の分施は、茎葉の成長が夏秋期に進むことで養分吸収が旺盛になることからと考えられます。そのためピンポイントでの施肥ではなく、夏秋期を通じた施肥が必要とされるでしょう。参考文献2)には、アスパラガスの年間の肥料成分含有量の推移が地上部と地下部別に時期ごとに図5にまとめられています。この推移に沿った分施が必要と考えられます。

 

参考文献3)では、暖地における施肥の実際として、春どりの追肥(3月)に10a当たり収穫量150kgごとに窒素2~3kg(量的管理法)、4~5月の元肥と追肥、盛夏期の追肥(2週間に1回、10a当たり窒素2~3kg)、止め肥(10月上旬)として茎葉刈取り2か月前に最後の追肥といった目安を紹介しています。これらは地域によって生育ステージがずれるため、調整が必要とされています。なお追肥における量的管理法とは、収量をカウントしながら、それに応じた追肥を窒素量相当で計算し行う方法となります。

 

今後の展開

アスパラガスの栽培は全国に広まり、都道府県ごとに栽培基準や栽培マニュアルが公表されています(参考文献4)、5)など)。施肥基準はおのおので若干異なっていますが、それらは目安としてとらえる必要があり、収量や土壌分析結果に応じた修正が必要と考えられます。

また化学肥料削減のため、一部を油粕に置き換える方法(参考文献6)、7))もあり、多肥となるアスパラガス栽培での施肥コストの低減も念頭に置いています。

なお、アスパラガス栽培では大量の潅水が必要とされ、潅水作業の省力化が求められています。養液土耕栽培の導入がアスパラガス栽培でもみられますが、追肥作業の自動化やピンポイント施肥による効果の他、タイマーや土壌水分に応じた潅水の自動化による省力効果も生まれています。ゼロアグリのアスパラガス栽培での導入例(長崎県壱岐市 壱岐の島 このみ農園様壱岐の島 このみ農園様、長崎県太良町 A-Noker安東様)を紹介していますので、ぜひご覧ください。

参考文献

1.井上勝広,アスパラガス半促成長期どり栽培の肥培管理と濯水管理(2014年),農業と科学 平成26年5月1日

2.井上勝広,アスパラガス半促成長期どり栽培圃場の土壌実態と窒素の適正施用量および硝酸態窒素の簡易分析法(2005年),長崎総農林試研報(農業部門)31

3.元木悟・井上勝広・前田智雄,アスパラガスの高品質多収技術(2008年),農文協

4.山口県農林総合技術センター,山口県アスパラガス栽培管理マニュアル(2015年)

5.長野県・JA全農長野,アスパラガス収量性向上マニュアル(2018年3月 改訂版)

タイトルとURLをコピーしました