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トマトの夏秋栽培/抑制栽培/夏越し栽培|様々な作型の特徴とメリット

近年、全国的にトマトの作型において長期採り(長期1作)が多くみられるようになりました。これはお盆前後に定植を行い、10月頃から収穫を開始し、日照が低下する年末を越えて、年明けから日照が増加するに従って収量を伸ばし、5月前後に収穫のピークを迎え、6月から7月にかけて収穫と栽培を終了、片づけや土壌消毒、養液栽培では培地の交換や設備の洗浄消毒を行って次の定植に向かう1年を通じた作型になります。大規模施設での養液栽培による作型のほとんどはこれになり、また栃木、愛知、熊本などのトマト大産地での土耕栽培、養液栽培での作型でも同様になります。

 

長期採り作型での収穫期間は長い場合は10か月程度にもなり、収量もそれに応じて向上します。収量重視の作型と言ってもよいかもしれません。この作型が全国的に広まることで、トマトの出荷量も伸びたと言えますが、一方で収穫のピーク期間も全国的に重なり、価格の低迷にも結びついています。そのためピーク期間を避ける傾向も最近ではみられます。

 

また長期採りの作型と言えども、収穫の空白期間があり、そこを埋める産地や作型も存在します。トマトの作型は、元来は産地や生産者によって様々なバリエーションがありましたが、それが近年は長期採りに収れんしてきました。しかしトマトの需要は年間を通じ高く、特に長期採りの出荷期間から外れる7月から10月にかけても、サラダ、生食向けなど店頭にトマトが切れることはありません。本記事では、この期間の出荷に向けた様々な作型についてご紹介します。

トマトの夏秋栽培

夏秋栽培は、北日本の寒冷地や各地の高冷地が中心の作型になります。全国的な産地として、北海道平取町、青森県津軽地域、福島県会津地域、長野県信州地域、岐阜県飛騨地域、愛媛県久万高原町、熊本県阿蘇地域などがあります。

GW頃に定植を行い、7月から10月頃にかけての短期間の出荷が特徴です。北日本や高冷地と言えども、近年は猛暑も発生し高温対策も必須となっていますが、夜温は20℃台前半に下がる地域であり、トマトの夜間の呼吸による消耗も少なく、昼夜温較差によって良好な品質も得られ、大量の収穫~選果出荷体制からブランド化が進んでいます。また大玉トマトだけでなく、ミニトマトによる産地化も一部では行われています。

栽培施設は簡易な雨よけハウスがほとんどで、積雪地帯では冬期向け被覆資材を撤去し、毎年張替えを行っています。病害虫が屋外で越冬できないような寒冷地では病害リスクは低下し、北日本などでは防虫ネットを用いない施設もみられます。

一方で暑熱対策が必要な期間もあるため、遮光ネットの展張や遮熱剤の塗布が行われたり、循環扇による通風も行われる場合もあります。暖房設備は不要な作型で、換気は単棟ハウスの手巻きの側窓換気が主流です。単棟ハウスを多数管理する場合には、換気作業の負担が大きくなりますが、夜間も側窓を開放する期間が長い作型と言えます。

潅水は簡易な潅水チューブによるものが主流で、点滴潅水による養液土耕栽培を行うケースもみられます。

栽培上の課題として、猛暑対策の他に、近年の天候不順や台風被害の影響があげられます。この数年は夏秋栽培の収穫期間に天候不順が長引くことが多く、それに遭遇した産地への影響は大きなものがあります。また台風の進路に当たる産地は少ないものの、近年の台風コースの変化や迷走などにより思わぬ被害に合うことも考えられます。強風に対する耐候性はほとんどない施設のため、被害が心配されます。他に、裂果が発生しやすい時期の栽培、収穫となり、遮光による温度調節、潅水量の調節、裂果発生の少ない品種の選定などの対策が求められます(トマトの裂果と対策の記事はこちら)。

販売面では、産地間の競合は比較的少なく、産地も全国に分散しているため、価格低下は起こりにくいと考えられます。

トマトの抑制栽培

抑制栽培とは、夏秋栽培と同様に無加温が中心で、夏期から秋期が収穫期間の作型になります。寒冷地や高冷地ではなく平地の温暖な地域で行われる栽培が中心です。定植時期は夏秋栽培の同様のGWより7月頃までになり、収穫期間は早いもので7月から始まり、無加温栽培では年内ぎりぎりまで収穫を続ける場合が多く、寒冷地や高冷地の夏秋栽培よりは収穫期間の終わりが遅くなります。

夏秋栽培は雨よけハウスなどによるトマト単一の作型でしたが、トマトの抑制栽培は他の作物の後作に組み入れられるもので、年2作型の一つとして取組まれています。抑制トマトとして市場で認知されている千葉県産や茨城県産のトマトは、メロンなどの後作が主流です。施設は雨よけハウスもみられますが、耐候性の高いしっかりした構造の単棟ハウスや、より装備化された連棟ハウスの利用もみられ、暖房装置やカーテン装置、養液土耕装置などが利用可能な場合もあります。

 

栽培上の特徴として、高温期、猛暑期を越え、気温が低下する時期からの収穫が主流となり、高温対策や病害対策、樹勢の維持など、様々な栽培技術が必要とされます。また無加温の場合には、収穫末期に低温にあたり最後はトマトが枯死する状態にもなって収量も多くは望めず、ハウスの密閉期間も長くなり多湿による病害対策が必要となります。

栽培的には比較的難しい作型と言えますが、年2作型の中での周年化された作業や出荷による経営の安定化につなげることも考えれます。トマトとメロン、トマトとキュウリなど、古くからある作型の組み合わせとなりますが、連作障害の回避やトマト長期採りの弊害回避の面からも、改めて検討することも考えられます。

トマトの夏越し栽培

夏越し栽培は正式な名称ではなく、明確な定義もありませんが、概要をご紹介します。近年の5月前後の全国的なトマト出荷量の増加と価格低迷に対し、その時期の収穫は行わずに新たに定植をし、無加温の場合は7月頃から年内にかけての収穫を行う、また加温の場合は年越しをしての収穫を行う作型になります。抑制栽培との違いは、あくまでトマト単一の作型であること、施設も高軒高ハウスや養液栽培など、ハイスペックで設備化されたものが多くなります。

夏越し栽培は抑制栽培と同様に高温期の栽培となり、技術的にも難しい作型です。フェンローハウスなど高軒高のハウスで遮光装置や遮熱資材、細霧冷房装置、換気扇などを併用し、ハイワイヤー栽培でトマトの群落もしっかりと作りながら、蒸散による気化冷却効果も最大限に活かす考えも取り入れられています。特に気化冷却の併用によってハウス内気温が外気温並みに低下することもあり、高温期の収穫につなげることが可能になります。

 

様々な設備や技術の合わせ技により実現可能な作型であり、誰でもが取組めるものではありませんし、高温期での収穫は熱帯夜によって品質低下もおこり、また裂果のリスクも高く、難易度が高い作型と言えます。一方で気候変動や台風被害の影響を受けやすい中でも、チャレンジする生産者や生産法人も少なからずみられ、今後も注目すべき作型と技術体系と言えるかもしれません。

 

なお東北地方の太平洋沿岸部など、日射量も豊富で夏期の猛暑もそれほどではなく夜温も低下する地域では、年明けに定植し年内一杯の収穫を行う作型も取組まれています。これも夏越し栽培の一種と言えますが、オランダでのトマトの作型(年末年始定植~年内収穫)に近いものです。年間の日射量を最大限に活かして総収量も追及でき、夏秋期の収量も確保される作型と言えます。

今後の展開

長期採りの作型の収穫期間を補うように、全国の夏秋栽培抑制栽培の産地からは7月~10月の期間を主体にトマトの出荷がされています。設備投資も比較的少なくすみ、トマトの販売単価の低迷も起こりずらい時期の栽培であり、周年の出荷、販売や通年での雇用の安定確保などのため、通常の作型に加え新たに取組むケースもみられます。また最後にご紹介したような夏越し栽培にチャレンジし、通常の作型と組み合わせるケース、更に他の果菜類の栽培とも組み合わせるケースなどもみられるようになりました。

栽培品目や作型は、気象条件や地理的条件などの中で、本来は自由に選ばれるものですが、産地での出荷体制の中ではルール化がされるものです。様々な要因を考慮しながら、今後も作型の選定、販売への反映を検討すべきと言えるでしょう。

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