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トマトの裂果とは?原因と対策を解説

トマトの裂果とは、文字通りトマトの実が割れてしまう現象です。出荷可能量の減少や等級の低下につながり、トマト栽培においてはできるかぎり避けたいものです。本稿では、トマトの裂果の種類や原因、対策をまとめております。

裂果の種類

裂果は大きく二つに分けられます。一つは放射状裂果、一つは同心円裂果です。放射状裂果は、ガクの下からに放射状に割れる症状です。高温期に多く発生し、果実への強日射や吸水、結露などが原因と言われています。同心円裂果は、ガクを中心に同心円状に割れる症状です。低温で果実肥大も遅くなる秋期に発生しやすいものです。果実温度の昼夜温格差が大きくなると発生しやすいと言われています。その他に、裂皮(れっぴ)とも呼ばれる側面裂果があります。これは側面を中心に長い裂け目が入ることが多く、形や方向がランダムな裂け方になります。

 

放射状裂果、同心円状裂果、裂皮は、果実の肥大時期に応じた発生を示します。果実の肥大が最も進む緑熟期までは果実が硬く、強日射などで放射状裂果が起こりやすくなります。緑熟期以降に果実の成熟が進む白熟期には果実がやわらかくなり、吸水や昼夜温較差などで同心円裂果や裂皮が起こりやすくなります。また以降の果実の着色期では、低温で着色期間が長くなるほど昼夜温格差などで同心円裂果が起こりやすくなります。


裂果の発生時期は、夏秋栽培での梅雨時期から秋口まで、また長期栽培で早期に定植し早期の収穫が9月頃から開始される場合などにあります。特に9月は樹勢が低下したり、強日射や夜温低下など、発生要因が重なりやすく注意が必要となります。

ミニトマトの裂果

なおミニトマトでは、大玉トマトに発生する同心円状裂果や裂皮は発生せず、ガク付近から縦方向に裂ける場合がほとんどになり、発生時期も着色が進んでからになります。

裂果の要因と対策

『裂果は、果実へ流入する水および同化産物が多い場合、果実が肥大するスピードに、表面のクチクラと表層細胞の伸長が間に合わず、表層に亀裂が発生することで発生する』とされています。また裂果は『高温、高湿度、強日射条件などの環境下では発生しやすくなる。また湿度は、飽差の日較差が大きくなると裂果の発生が増加する』とされ、『これらの環境要因と、葉の枚数に比べ果実数が少ない、つまり着果負担が少ない場合』に裂果が発生しやすいとされています(引用文献1)


これらのことを踏まえると、外部環境要因(日射、気温、湿度(飽差)、水分)のおのおのが影響し、また外部環境と栽培管理によって植物の着果や肥大、葉面積等も変化することで、果実肥大と果実への養水分の供給のバランスが崩れ、裂果の発生につながるものと考えられます。様々な要因が絡んでいますが、一つ一つを紐解いて、対策を考える必要があるでしょう。

トマトの裂果の原因はさまざま

果実への結露


結露によって果実が吸水し膨らむことで裂果の要因になると言われています。潅水過多を避けることや、ハウス内の湿度管理を換気や除湿暖房によって行うことで結露を防止します。また乾燥しやすい時期には、葉かきを抑え葉面積を保つことで、ハウス内の湿度を高め安定化することで、裂果防止にもつながるでしょう。

換気や暖房により結露を防止

果実への日射

果皮に直接強い日射があたり、果実温度が急激に上がることで裂果が進みやすくなります。また紫外線による果皮の劣化も裂果の要因になります。そのため遮光を中心に対策をしますが、遮光率や遮光時間を長くすると樹勢低下のマイナス面が強くなります。15~20%程度の弱い遮光率のカーテン資材を用いること、熱線カットタイプの遮熱資材を塗布することなどを検討します。


遮光の他、栽植密度と群落の密度を高め、果実への強日射を緩和する方法も考えられます。その際に葉の相互遮蔽ではなく、果実が葉の陰になるような株間や畝間の詰め方の工夫が必要になるでしょう。また葉かきを少なくすることで、果実への強日射の緩和につながることもあります。特に葉面積が小さくなる高温期の葉かきには注意が必要です。

遮光による光の制御
遮光による日射の緩和

土壌水分の変化

土壌水分が急激に変化することで作物の吸水量が上昇し、裂果の要因になることが考えられます。乾燥や潅水にともなう土壌水分の変化を抑えるよう、少量多潅水を中心に対策をします。土壌の乾燥状態と湿潤状態の差が大きいと裂果につながるため、点滴潅水による少量多潅水が対策として有効になるでしょう。潅水制御は日射比例による他、ゼロアグリの土壌水分センサーによるAI潅水制御が土壌水分の安定化にも寄与します。

ゼロアグリの土壌水分量モニタリング
ゼロアグリの土壌水分モニタリング画面

裂果しにくい品種の選定

近年のトマトの育種では、耐裂果性が重視され、裂果の要因となるコルク質の形成がしにくい品種も育成されています。各種苗メーカーより裂果しにくいとされる夏秋栽培向け品種が発売されていますので、試作を進めるなどして、導入を検討すべきでしょう。最近は海外のトマト品種の栽培もみられ、果肉や果皮が硬く裂果が起こりにくい傾向のものもあります。

劣化しやすい品種の選定も重要

裂果には総合的な対策が必要

以上の裂果の要因の他に、高温期や梅雨時の低日照などの環境要因による樹勢の低下も、裂果につながるものと考えられます。近年の気候変動による特に夏秋期の天候の不安定化は、トマトだけでなく様々な作物の栽培を難しいものにしています。

こうした環境下では樹勢の維持も大変難しくなりますが、日々刻々と変わる天候に対し、遮光、換気、潅水や作物の管理について注意を払う必要があるでしょう。また裂果への対策は、どれか一つで効果が出るものではないため、樹勢の維持に注意をしながら様々な方法で総合的に取組むべきと考えられます。

 

引用文献

  1. 鈴木克己、生理障害の原因と対策、農業技術体系 (2014)

参考文献

  1. 夏のトマトの裂果 なぜ起きる? どう防ぐ?、現代農業 2018.8
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