潅水の自動化にはいくつかの方法があります。その最もシンプルで安価なものが潅水タイマーです。手動潅水から潅水タイマーに切り替えることで、様々なメリットが生まれます。今回は潅水タイマーについて詳しくご紹介いたします。
潅水タイマーとは
手動潅水では、潅水の時間帯や潅水量などをすべて人間が手作業で行う必要があります。そうした潅水作業を自動化するのがタイマー潅水です。タイマー潅水によって、あらかじめ定められた時刻に一定量の潅水を行うことができます。
また手動潅水で必要だった多数のバルブの開閉操作から解放され、大幅な省力化をはかることもできます。
さらにタイマーの設定値を調整、変更することで、植物の生育状態や気象条件に合わせた潅水量の調整も可能となります。
潅水タイマーの仕組み
タイマー潅水を行うには、そのための仕組みを導入する必要があります。簡単に言えば手動潅水で使っていた手動バルブを電磁弁に置き換えて、電磁弁の開閉動作をタイマーにより自動化するのが、タイマー潅水の仕組みです。
タイマー潅水の代表的な仕組みでの構成を図に示します。左側の制御装置には、24時間タイマーとサブタイマーが接続されています。24時間タイマーは潅水開始時刻を設定するもので、ピンの設定などで1日に何回も潅水指示が可能となります。その他にサブタイマーが潅水の系統数分だけあります。これは系統ごとの潅水時間を細かく設定するもので、1回の潅水当たりの潅水量をおおまかに設定することが可能となります。
右側の潅水系統ごとに設置された電磁弁は各々制御装置と配線され、制御装置からの電力供給によって開閉します。実際の潅水は、24時間タイマーが設定された時刻になった際に開始され、潅水系統A、B、Cの順に、各々のサブタイマーの設定値分だけ、各々の電磁弁が開き潅水が行われます。
なお系統を増やすことは、制御装置の出力点数の範囲で可能となり、一度に多くの潅水系統を制御することも可能です。
手動潅水では、極端な場合には畝ごとに手動バルブを設け、個別の開閉を行うこともあります。しかしタイマー潅水で同じことを行うと電磁弁の数量が多くなりコストアップとなること、また配線や制御出力点数が多く複雑になることから、実際は系統数を整理して簡略化する必要もあります。
潅水タイマーのメリット・デメリット
タイマー潅水のメリットとして、低コストで潅水の自動化と省力化がはかれることが挙げられます。タイマー潅水の制御装置は、制御系統数や付加機能などにより様々ですが、10万円程度で複数の潅水系統を制御可能なものが販売されています。その他に系統ごとに電磁弁が必要で、それらの配線工事が別途必要になりますが、何百万もするような高価な設備ではありません。
また他のメリットとして、24時間タイマーやサブタイマーの設定値を調節することで、作物に必要とする潅水量をある程度の精度で与えることが可能となります。「ある程度」というのは、かなり幅があるということで、植物に対する観察、土壌の水分の含み具合の確認、日射量など気象条件の予測など、様々なことを加味した上での判断が必要となります。
判断が的確であれば精度も高くなりますが、人間の判断のためブレや個人差は当然あります。
タイマー潅水のデメリットとして、そのような人間の判断にもとづく潅水時刻や潅水時間の設定となるため、本当にその設定が正しいものか、根拠がはっきりしないこと、また状況の変化に応じて調整をした場合に、必ずしもそれが適切でない場合もあることなど、設定自体が難しいことが挙げられます。
さらに気象条件や植物の生長量の変化などに応じて潅水回数や潅水時間を調整する必要があり、そのたびに観察や判断、変更作業が発生します。
なお、より高級な制御と言える日射比例潅水でも、植物の状態を見ながらの判断と潅水時間の調整が求められることがあります。
まとめ
タイマー潅水について、手動潅水と比較しながら、その構成や特徴、メリット・デメリットについてお伝えいたしました。
実際のハウスでの土耕栽培の現場では、多くの箇所で手動潅水が行われています。簡単な電気工事や配管工事と安価な設備投資により、タイマー潅水は実現可能です。また電磁弁とその配線をそのまま利用しながら、コントローラーを日射比例タイプやゼロアグリなどにグレードアップして使うことも可能です。
そうした点から自動潅水の入門としてタイマー潅水を利用することもお勧めできます。