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キュウリの摘心栽培とつるおろし栽培|特徴とメリット・デメリットを解説

キュウリの栽培では、整枝の方法として、摘心栽培とつるおろし栽培に大きく分けることができます。おのおのの特徴やメリット、デメリット、地域性などについてご説明をします。

摘心栽培とは

摘心栽培は、主枝の生長点を摘心して、子づる(側枝)や、さらに子づるから伸びる孫づるを利用し、それらも摘心して収穫を行う方法です。栽培のポイントとして、おのおのの枝の摘心位置(節数)の見極めにより、各節での着花、着果数を確保することがあります。樹勢をみながら各枝の摘心を行い、また古い葉の摘葉も行い、空間と採光性を確保します。

摘芯栽培でのキュウリの群落と果実

摘心栽培は、年2作型による場合が多く、例えば夏から秋にかけ収穫を行う抑制作型と、冬から夏にかけ収穫を行う促成作型などの組合せがあります。摘心栽培を長期間連続して行うことは難しく、このような年2作型を取る形になりますが、メリットとデメリットが見受けられます。

 

メリットとしては、収穫のピークを気象条件や販売条件に合わせ計画できることがあります。例えば夏場でサラダ用途などの需要が高まる時期や、長期作型の収穫が途切れる時期などに合わせた作型を組むことが考えられます。摘心栽培では樹勢の維持が特に初期は容易であり、このような栽培計画には適したものと言えます。また日照が低下する12月から1月の間は樹勢が低下し収量も期待できないため、その時期は作型の合間や定植時期にあてることも多くみられます。

 

デメリットとしては、収穫の空き期間がどうしても生じることがあります。それによって総収量に影響が出る場合もあり、また出荷が途切れることでの販売上の問題になる場合もあるかもしれません。しかし販売条件をにらみ高単価が期待できる時期に収穫ピークを合わせることで経営上のメリットを享受することも考えられます。

 

また栽培管理上のデメリットとして、摘心や摘葉の作業負担があります。摘心位置を見極めながら、群落の内部での摘心作業を行うことは、ある程度の熟練を要しますし、作業負荷も発生します。また収穫では群落の葉や茎と果実が重なり合うことが多く、その際には同様に作業負荷が発生します。

つるおろし栽培とは

つるおろし栽培は、主枝を摘心したのちに発生する子づるを4本用い、それらを摘心しないで誘引を続け収穫を行う方法です。子づるから伸びる孫づるは適宜摘心を行います。この方法は長期作型として利用され、主に晩夏から秋に定植を行い、翌年の夏まで収穫を連続して行います。これにより長期間の収穫期間が確保されます。

つるおろし栽培での生長点(洗濯ばさみを用いた誘引方法の例)

メリットとしては、摘心栽培のような熟練を要する作業は少なく、誘引作業などマニュアル的に行うことができ、雇用労力の導入も容易とされています。それにより大規模経営に結び付けることも可能となります。また収穫期間が途切れず、気象条件が良ければ厳寒期の収量も期待でき、年間での高い収量に結び付けることが可能となります。また誘引とつるおろし、および葉かきによって、収穫位置を一定の高さにしながら果実の視認性を高めることも可能で、収穫作業も楽に行うことができます。

 

デメリットとしては、つるおろし作業の負担があります。キュウリの生長は他の果菜類に比べ早く、定期的に誘引とつるおろしを繰り返す必要があります。これらの作業が遅れると樹形が乱れ回復にかなりの作業負担と時間が発生してしまいます。また長期栽培のため、樹勢の維持が重要となりますが、低日射の影響を受けたり、病害虫の発生など、栽培期間中のトラブルに会う確率も高まり、管理上の注意が一層必要となります

 

つるおろし栽培による長期栽培では主枝の長さが15m程度になることもありますが、あまり主枝が長いと根から吸収する養水分を十分に生長点などに送ることができず、樹勢の低下につながることも考えられます。

栽培方法の地域性について

キュウリの栽培には産地ごとに様々な形態が。

キュウリの栽培方法や作型は地域性が高く、産地ごとに様々な形態が生まれています。その中で、つるおろし栽培による長期作型は日射量の豊富な愛知県や西南暖地(高知県、宮崎県)で普及しています。これらの産地では厳寒期の日射量が豊富なため、収量の低下もそれほどみられず、その時期に他の産地に先駆けて出荷を行い単価も確保する販売形態をとっています。

一方で、摘心栽培による年2作型は全国的にみられ、宮城県、関東平野の各県、佐賀県などが中心となります。日本海性の気候となる佐賀県では年末から年明けに定植を行い夏まで収穫を行う促成栽培と、初夏に定植を行い夏秋から年内に収穫を行う抑制栽培を組み合わせ、特に夏の高単価期の収穫出荷を重視しています。つるおろし栽培による長期作型では困難な時期の出荷となり、差別化が図られています。

キュウリ圃場の様子(宮崎県)

なお関東平野の各産地では、つるおろし栽培の普及が近年みられます。これは雇用労働力の導入を目的としたものが多く、規模拡大にもつながっています。ただしトマト栽培のようなヘクタール単位の大規模施設栽培はキュウリではほとんどなく、数10a単位の施設を複数管理する形態が多くみられます。

 

キュウリ栽培には自由な面があり、例えば夏秋作で摘心栽培を、越冬の長期作でつるおろし栽培を組み合わせて周年出荷を行う生産者も、気象条件のよい地域において出現しています。このような組み合わせの作型によって、年間を通じた契約出荷も可能となり、経営上のメリットを創出していると言えます。

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