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イチゴの高設栽培~高設ベンチや培地、潅水方法を紹介~

イチゴの養液栽培は、作業性を考慮した高さ1m程度のベンチ上に栽培ベッドを配置して行うため、高設栽培とも一般に呼ばれています。イチゴの栽培面積が減少する中で、養液栽培面積とその比率は増加しています。平成30年の養液栽培実面積は685haで、イチゴの全栽培実面積3,697haに対して19%でしたが、平成21年には474haで全栽培実面積3,864haに対し12%であり、その増加傾向がわかります。

 

本稿では、イチゴの高設栽培の概要と潅水管理の特徴などについてご紹介いたします。

高設栽培のベンチと配置

イチゴ高設栽培は一般的な丸屋根型ハウスで行われることが多く、間口6mの連棟ハウスであれば5列程度の栽培ベンチが配置されます。最近は東北地方などで大型の屋根型ハウスでの導入も多くみられ、間口8mの連棟ハウスに7列程度が配置されます

これらは固定ベンチとも呼ばれ、いずれも10a当たり7,000株程度の栽植本数となります。固定ベンチはハウス用の鋼管で組まれることが多く、継ぎ手などの既存のハウス部材を用いることで自家施工も可能です

高設ベンチ
鋼管で組まれた高設ベンチ

また通路間隔を狭め機械式で水平移動が可能な移動ベンチにより、10,000株程度まで栽植本数を高め単収向上をはかる例もみられます。

栽培槽の種類

栽培槽には都道府県単位で利用されているローカルなものが数多くあり、統一化も言われていますが、地域に根ざしたものも多く、標準化の動きもみられません。またメーカーの成形品も多い中で、自家施工が可能な簡易な構造のものもみられます

栽培槽は発泡スチロールや樹脂を素材とした成形品と、不織布やシート類を展張して培地を溜める形のものに大別されます。前者は1m程度の成形品を連結して栽培ベンチに置き、内部にシートを敷き培地を載せるとともに排水を流す構造も持っています。栽培ベンチに緩い傾斜を持たせて下流に排水を集めます。後者は簡易な構造ですが排水が下に落ちるため、それを集めて下流に流す樋の設置も必要になります。

高設ベンチとイチゴの苗
高設ベンチとイチゴの苗

その他に、培地を詰めたバッグを栽培ベンチに置く方式や、連結ポット形状のユニットに培地を詰め栽培ベンチに置く方式など、様々な方式がみられます。

自動化された潅水管理と培養液管理

イチゴ高設栽培では前者のラフな潅水管理が主流でしたが、給液量と排液量がともに多くなり、肥料分の無駄も発生する問題があります。そのため、排液量を測定して排液率を一定に保つような潅水管理を行う方式、日射比例制御による少量多潅水の方式など、自動化された潅水管理が取り入れられています。その場合は点滴チューブやオンラインドリッパーによる均一な潅水が求められます。

排液量の測定には排液をタンクに集水しポンプアップの回数などをカウントする方式や、流量センサーを排液の配管途中に設置してリアルタイムに行う方式などがあります。

排液流量計
流量センサーによる排液量の測定

潅水管理では過不足なく潅水を行うことが重要で、潅水が多すぎると酸素不足となり、少ないと根痛みの原因となります。そのため、このように排液量を測定して排液率(排液量÷給液量(%))を求め、それが一定範囲となるような潅水管理を行い、培地の水分率を安定化させる方式がとられます。またゼロアグリを利用して土壌水分を直接測定して潅水管理を行うことも可能で、そのようなユーザー事例も増えています。

なお、培養液管理はECによる濃度管理が行われており、定植から生育ステージごとに濃度を調整した給液が行われます。またイチゴの着果や草勢を確認しながらの調節が必要となり、イチゴの肥料分の吸収状況を排液のECと給液のECの推移や、葉色なども参考にします。

ゼロアグリ導入ユーザーの事例

ゼロアグリでは、土壌水分センサーと日射比例制御を利用したAIによる潅水制御を、イチゴ高設栽培にも展開しています。ユーザーの和歌山県岩出市のよしむら苺ファームさんでは、和歌山県オリジナル品種(まりひめ)を和歌山県方式のハンモック型高設栽培をベースに土壌を多目にした栽培を、ゼロアグリを利用して行っています

よしむら苺ファームの高設栽培
オンラインドリッパーを使用

また同ファームのWebサイトには「高設栽培とは大地から隔離された場所での栽培なので、いかに本来の土壌に近い状態にしてあげるかが重要だと考えております。」とあり、菌体資材や針葉樹の完熟たい肥、ケイ酸白土、キトサン、もみがら燻炭、有機配合肥料など自然由来のものを厳選し利用をし、イチゴの根の状態を健全に保つよう工夫をされています。

このような土壌にこだわりを持った高設栽培でも、ゼロアグリによるイチゴの生育に適した潅水管理が効果を発揮しています

イチゴ高設栽培の今後の展開

イチゴの養液栽培面積とその割合が増加する中で、今後も新規就農や規模拡大などにおいて高設栽培の導入も進むものと考えられます。特に雇用を導入した大規模経営では作業性や労働環境を重視しており、高設栽培は必要条件になっています。また近年の農福連携による障がい者の農作業においても、作業性の良い高設栽培は適するものと言えるでしょう。

高設イチゴの定植作業

ゼロアグリでは、高設栽培への導入事例が増える中で、新たな潅水管理の方式も開発しています。より排液量を低減し肥料の節減と環境負荷の低減をはかるため、流量センサーによる排液量のリアルタイム計測を行い潅水管理に生かす方式です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

参考文献

園芸用施設の設置等の状況、農林水産省

岩崎泰永、イチゴ栽培の概要、養液栽培実用ハンドブック(2018)

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