沖縄県では本島や八重山諸島での施設園芸が盛んです。ほとんどが無加温での野菜、花き、果樹の栽培が行われており、地元向けや県外向け端境期品目として販売されています。本記事では、県外とは異なる品目や作型による沖縄県の施設園芸と野菜生産の特徴をご紹介します。
沖縄県の施設園芸と野菜の栽培面積
2020年農林業センサスでは、沖縄県全体の施設園芸面積は約579haで、経営体数は1990とあり、一経営体当たりの面積を求めると約29.1aになります。グラフ1には、主な市町村の施設園芸面積と経営体数をあげています。上位には宮古島市、今帰仁村、名護市、糸満市、南城市などがあり、1経営体当たりでは宜野座村が最も大きく43aあり、その他も30~34a程度となっています(グラフ2)。
なお同センサスでの県全体の加温温室は約11.3haで全体の2%程度となり、ほとんどの施設では無加温栽培が行われていることがわかります。
次に、沖縄県園芸振興課調べによる「園芸用ガラス室・ハウス等の設置状況調査(平成29~30年)」では、データが示されていますので引用します。説明として、「沖縄県における野菜の施設栽培面積は、県外出荷用野菜及び県内向け野菜の増加に伴い、平成29年には、405.2haの整備面積となっている」とあり、施設園芸による野菜の栽培面積が増加したことが伺えます(グラフ3)。一方でグラフ4における一戸当たりの施設面積は県全体で15aであり、施設野菜野菜農家の経営面積が小規模であることも伺えます。
次に農林水産省の調査による沖縄県と全国の園芸用施設設置実面積、うち新設された面積について表1に示します。沖縄県の野菜用の園芸用施設設置実面積は404haで、うち調査期間内に新設された面積は約20%あり、高い比率となっています。野菜用、花き用、果樹用の計においても約10%になります。一方で全国では野菜用の園芸用施設設置実面積は約3万haで、うち調査期間内に新設された面積は1%台で、野菜用、花き用、果樹用の計においても同様に1%台です。さらに調査期間内に新設された面積について沖縄県が全国に占める割合は、野菜用で約16%に、また野菜用、花き用、果樹用の計でも約13%の高い比率になります。以上より、調査期間における計算結果としてになりますが、沖縄県では全国の中でも園芸用施設の新設が非常に盛んであることが伺えます。
沖縄県の施設園芸品目と野菜生産
次に品目別の施設園芸での栽培面積と経営体数について、同センサスよりグラフ5にまとめました。作付面積が多い順に、その他の野菜(約156ha)、すいか(約30ha)、トマト及びきゅうり(各約29a)、ピーマン(約25ha)となっています。その他野菜については、ゴーヤー、さやいんげん等が含まれるものと思われます。
次に沖縄県には野菜指定産地がいくつかあり、うち施設園芸品目の産地は冬春トマト(産地名:饒波、指定年度:平成8年度、区域: 豊見城市)と冬春ピーマン(産地名:具志頭玉城、指定年度:平成9年度、区域:南城市のうち旧玉城村の区域及び島尻郡八重瀬町のうち旧具志頭村の区域)があります文献2)。
また沖縄県では農林水産戦略品目として野菜16品目を指定し、うち施設野菜品目と認定市町村は表2の通りです。野菜の戦略品目には、ゴーヤー、すいか、ピーマン、トマト、きゅうりがあり、これらの品目の振興策として、園芸用ハウス施設や選果施設の建設に国庫や県単の補助事業が利用されています文献2)。
次に果樹の施設による作付面積は、パインアップルが約3.7ha、その他の果樹が約190.5haとなっています。その他の果樹の経営体数は607で、1経営体当たり作付面積は約31.4aとなります。その他の果樹の内訳は、パパイヤ、マンゴー等の熱帯果樹が中心と思われます。
最後に花きの施設による作付面積は約159.9haで、経営体数は480、1経営体当たり作付面積は約33.3aとなります。花きの内訳は、キク、ユリ、トルコキキョウ等の切り花が中心と思われます。
参考文献
1)2020年農林業センサス農林業経営体調査 沖縄県結果報告書、沖縄県企画部統計課
2)沖縄県の園芸・流通(令和5年1月)第3章野菜生産の状況、沖縄県農林水産部園芸振興課
3)園芸用施設の設置等の状況(R2) ガラス室・ハウス設置実面積、農林水産省農産局園芸作物課花き産業・施設園芸振興室
4)沖縄県の園芸・流通(令和5年1月)第2章 園芸農業の概要、沖縄県農林水産部園芸振興課