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熊本県の施設園芸と野菜生産② ー主要施設野菜の生産出荷の概要ー

次に本記事では、主要施設野菜品目のうち、トマト、ナス、イチゴの生産出荷状況について、概要をご紹介します。

 

熊本県のトマト生産の概要

 

ここでは、全国一の作付面積と出荷量を持つ熊本県のトマト生産について、ご紹介します。

 

施設トマトの作付面積と経営体数と大規模経営

2020年農林業センサスによると、県内の施設トマト作付面積は1,176haとなります。また作付経営体数は2,223あり、1経営体当たりの作付面積は約53aとなります1)。市町村別内訳として上位より八代市が約535ha(545経営体、1経営体当り平均約98a)、玉名市が約223ha(440経営体、1経営体当り平均約51a)、宇城市が約110ha(236経営体、1経営体当り平均約47a)であり、この上位3市で作付面積の約74%を占めています。またトップの八代市では1経営体当たりの作付面積が平均約1haと大規模経営が行われていることが分かります。

全国一のトマト生産出荷量

また、政府統計「令和3年産都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量 」によると、県内のトマト作付面積は1,270ha、10a当り収量は10.4t、出荷量は128,100tで、同じく全国のトマト作付面積11,400haに対し約11%、10a当り収量約6.4tに対し約163%、出荷量659,900tに対し約19.4%となります。トマトの出荷量において熊本県は全国トップ(2位:北海道の60,300t、3位:愛知の46,600t)の位置にあり2)、トマト生産出荷では全国をリードしていると言えるでしょう。

冬春トマト、ミニトマトの作付面積と出荷量の推移

熊本県より経年で公表されている「熊本県主要野菜生産状況調査結果」3)より、冬春トマトの作付面積と出荷量について、以下にグラフ化をしました(平成27年産のデータは熊本地震の発生により欠損したと思われます)。

冬春トマトの令和3年産での作付面積は879haで、対平成25年比で16.4%の増となっています。うちミニトマトについては312haで32.2%の増で、ミニトマトの作付が拡大しています。また冬春トマトの令和3年産での出荷量は111,884tで対平成25年比で15.6%の増、うちミニトマトについては32,330tで44.7%の増で、ミニトマトの出荷量も拡大しています。ただし、令和期には冬春トマト全体でもミニトマトについても出荷量は停滞、もしくは減少傾向がみられます。

なお、「令和3~4年度(2021~2022年度)熊本県農業動向年報」4)では、野菜生産の動向としてトマトについて、『トマト(ミニトマト含む)は、県下全域で栽培されており、低コスト耐候性ハウスの導入や他品目からの転換等により、作付面積は堅調に増加してきたが、近年は横ばいとなっている。令和3年産(2021年産)は1,270haとなった。』と記載されています(農林水産省「野菜生産出荷統計」)。

関東や関西向けの遠隔産地としての立地

また同年報では、「主要野菜の地域別出荷割合(R3年産)」のJA熊本県経済連共販実績として、トマト出荷量の70,925tのうち関東(関東以北を含む)が44%、関西が26%、九州(山口県を含む)が17%、またミニトマト出荷量30,242tのうち関東が45%、関西が28%、九州が11%となっており、遠隔輸送産地としての販売が行われていることが分かります。

外国人の雇用

同年報では、「地域(公共職業安定所)別外国人労働者(農業、林業)の推移」として、令和4年の外国人労働者数が県全体で3,828人、うち八代地域が1,822人となっており、トマト施設栽培が盛んで大規模経営が多い八代地域での外国人労働者の雇用が盛んなことが伺えます資料:熊本労働局「外国人雇用状況」の届出状況集計結果 毎年10月末時点)。

熊本県のナス生産出荷の概要

 

2020年農林業センサスによると、県内の施設ナス作付面積は170haとなります。また作付経営体数は591あり、1経営体当たりの作付面積は約29aとなります1)。市町村別内訳として上位より熊本市が約116ha(経営体356、1経営体当り平均約33a)、玉名市が約15ha(38経営体、1経営体当り平均約39a)、宇城市が約11ha(経営体40、1経営体当り平均約27a)であり、この上位3市で作付面積の約84%を占め、またトップの熊本市が作付面積の68%を占めています

 

また、「令和3年産都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量 」によると、県内の冬春ナス作付面積は170ha、10a当り収量は14.7t、出荷量は23,400tで、同じく全国の冬春ナス作付面積1,040haに対し約16.3%、10a当り収量約11.0tに対し約133.6%、出荷量107,800tに対し約21.7%となります。冬春ナスの出荷量において熊本県は全国トップの高知県(作付面積:283ha、10a当り収量:13.4t、出荷量:36,200t)に次いで2位の位置にあります5)が、10a当たり収量では高知県に対し121.6%となり高収量化がはかられているものと考えられます。

 

熊本県より経年で公表されている「熊本県主要野菜生産状況調査結果」3)より、冬春ナスの作付面積と出荷量について、以下にグラフ化をしました。

熊本地震発生後の平成28年産では出荷量を減らしていますが、その後は地震前の水準に回復しており、令和期には微減傾向にあります。また作付面積はピークの令和元年産179haから低減傾向にあります。

 

なお、「令和3~4年度(2021~2022年度)熊本県農業動向年報」4)では、野菜生産の動向としてナスについて、『なすは、平成18年(2006年)以降夏秋なすを中心に減少に転じていたが、平成26年(2014年)以降、堅調な価格や低コスト耐候性ハウスの導入、他品目からの転換等により横ばいで推移しており、令和3年産(2021年産)は前年より2.9%減の406haとなった。』と記載されています(農林水産省「野菜生産出荷統計」)。

 

また同年報では、「主要野菜の地域別出荷割合(R3年産)」のJA熊本県経済連共販実績として、ナス出荷量の70,925tのうち関東(関東以北を含む)が39%、九州が26%(山口県を含む)、中京が18%、関西が12%となっており、トマト同様に遠隔輸送産地としての販売が行われていることが分かります。

熊本県のイチゴ生産出荷の概要

 

2020年農林業センサスによると、県内の施設イチゴ作付面積は253haとなります。また作付経営体数は993あり、1経営体当たりの作付面積は平均約25aとなります1)。市町村別内訳として上位より玉名市が約83ha(266経営体、1経営体当り平均約31a)、氷川町が約46ha(126経営体、1経営体当り平均約37a)、八代市が約23ha(70経営体、1経営体当り平均約33a)であり、この上位3市で作付面積の約60%を占めています。

 

また、「令和3年産都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量 」によると、県内のイチゴ作付面積は298ha、10a当り収量は4.1t、出荷量は12,100tで、同じく全国のイチゴ作付面積4,930haに対し約6%、10a当り収量約3.34tに対し約127%、出荷量152,300tに対し約7.9%となります。イチゴの出荷量において熊本県は全国トップの栃木県(作付面積:509ha、10a当り収量:4.8t、出荷量:22,900t)、2位の福岡県(作付面積:428ha、10a当り収量:3.8t、出荷量:15,800t)に次いで3位の位置にあります6)

 

「熊本県主要野菜生産状況調査結果」3)より、イチゴの作付面積と出荷量について、以下にグラフ化をしました。

令和3年産での作付面積は218haで平成25年産の277haに対し78.7%に、同じく出荷量は令和3年産が8,601tで平成25年産の9,862tに対し87.2%と減少していますが、単位面積当りの出荷量を計算すると約11%上昇しています。

なお、「令和3~4年度(2021~2022年度)熊本県農業動向年報」4)では、野菜生産の動向としてイチゴについて、『いちごは、玉名・八代地域をはじめ県下全域で作付けされている。高齢化、長時間労働等の影響により平成16年産(2004年産)から減少傾向であり、近年は県育成品種「ゆうべに」の導入等もあり面積減少が緩和され、ほぼ横ばいで推移している。令和3年産(2021年産)は前年より2.3%減の298haとなった。』と記載されています(農林水産省「野菜生産出荷統計」)。

また同年報では、「主要野菜の地域別出荷割合(R3年産)」のJA熊本県経済連共販実績として、イチゴ出荷量の70,925tのうち関西が46%、関東(関東以北を含む)が15%、中四国が14%、中京が13%となっており、関西圏を中心とした遠隔輸送産地としての販売が行われていることが分かります。

次の記事では、熊本県内でも全国的にもトマトの大産地となる八代地域でのJAや生産者の取り組みについてご紹介します。

参考文献

1)2020農林業センサス 統計表(令和2年2月1日現在)、2-3-(5)販売目的の野菜類の作物別作付(栽培)経営体数と作付(栽培)面積、熊本県統計調査課

2)令和3年産野菜生産出荷統計 都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量 トマト、e-Stat 政府統計の総合窓口

3)熊本県主要野菜生産状況調査結果、熊本県農産園芸課

4)令和3~4年度(2021~2022年度)熊本県農業動向年報、熊本県農林水産部

5)令和3年産野菜生産出荷統計 都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量 なす、e-Stat 政府統計の総合窓口

6)令和3年産野菜生産出荷統計 都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量 いちご、e-Stat 政府統計の総合窓口

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