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キュウリの養液土耕栽培、潅水と施肥のポイントをご紹介

キュウリの養液土耕

キュウリは主要果菜類のひとつで、栽培面積や担い手は減少傾向にあり、全国的な収穫量も減少しています。一方で堅調な需要のもとで販売単価も維持され、平均反収も増加傾向にあります。これには多収性品種の育成、栽培技術の向上、近年の環境制御技術の向上など、様々な要因があると考えられます。

それらの技術的要因のひとつに潅水があります。キュウリは葉面積が他の施設野菜に比べて大きいため、蒸散量も多く、それに応じた潅水量が必要とされます。また茎の伸長速度も早く、成熟果を収穫するトマト等と異なり、キュウリは未成熟果を収穫するため、生育のサイクルが早い作物です。そのため必要とする潅水量にも生育に応じた変化がみられます。本稿ではキュウリ栽培での潅水方法について、養液土耕栽培を中心に考えてまいります。

キュウリ栽培の特徴と潅水

キュウリ栽培のポイントのひとつに苗の定植後の初期潅水があります。これには活着を促すための株元潅水(手潅水)が行われます。苗の培地から主根を垂直方向に伸長させ活着を促進します。キュウリの根は広く浅く分布すると言われていますが、この初期潅水での活着促進で根圏を充実させ、その後の水分や養分吸収を容易にする必要があります。

 

初期潅水と並行して潅水チューブによる潅水を開始します。ここでの潅水チューブには散水を行う散水チューブと、点滴を行う点滴チューブなどがあり、従来型の土耕栽培では散水チューブが、養液土耕栽培では点滴チューブが用いられます。おのおのでの潅水方法の特徴について、以下に記します。

キュウリの養液土耕
ゼロアグリで養液土耕栽培しているキュウリ

日射センサーは通常、ハウスの外部に設置します。一日を通し影にならない箇所(ハウスの頂部付近など)に取り付け金具などを用い固定します。他の建築物や構造物、樹木などの影になると正確な計測や潅水ができなくなります。また日射センサーにはセンサー受光部のカバー(プラスティックやガラス製)があり、汚れや劣化があると同様に正確な計測ができなくなります。

キュウリ栽培と散水チューブ、点滴チューブによる潅水

散水チューブによる潅水の特徴

散水チューブによる潅水では、広範囲に大量の潅水が行われます。そのため根圏全体や通路を含め水分を十分に供給するには適した潅水といえます。しかし土壌表面に水たまりができることもあり、またハウス内の湿度も上昇しやすいものです。

散水チューブによるキュウリ栽培

ここで重要なこととして、一回あたりの潅水量を別途設定する必要があります。その潅水量と潅水するブロックにある作物の株数から1株当たりの潅水量が計算できます。一方で作物の生育ステージ、葉面積、生育状態、土耕栽培での土壌条件(排水性、保水性など)、環境条件(相対湿度、飽差など)により、作物が要求する潅水量も変化します。目安となる潅水量が提示されることもありますが、参考値として捉え、栽培現場に合った調整が必要となります。

一方で一度に大量の潅水を行うために、細かな制御は難しく、計算にもとづく潅水量の制御にはあまり適した方法ではありません。また散水チューブの散水孔ごとの吐出量にはバラツキがあるため、キュウリの株ごとの均一な潅水にも限界があると考えられます。

 

点滴チューブによるキュウリの潅水

次に点滴チューブによる潅水では、点滴により土壌に対してスポットで潅水がされるため、最小限の潅水量となります。そのため何回かに分けての潅水を行うこと(少量多頻度給液、もしくは少量多潅水と言う)になります。その回数や1回当たりの潅水量などを計算し機器の操作を行うことで、全体の潅水量を制御しやすい方法と言えます。

また点滴チューブのドリッパーと呼ばれる構造によって、一定の水圧のもとでの均一な吐出量が得られ、キュウリの株ごとに与える潅水量を均一化しやすい方法と言えます。さらに土壌表面全体を濡らすこともなく、湿度を低く保つことも可能であり、病害発生の抑制に働くこともあるでしょう。

点滴チューブ

キュウリの生育に合わせた潅水管理

キュウリは前述のように葉面積が大きい作物で、蒸散量も多くなります。その蒸散量も日々刻々と変わります。例えば早朝にハウスが密閉状態で湿度が高い状態では蒸散も抑制傾向にあるため、潅水量も少なめで良いでしょう。その後、日中に向かいハウスの換気が行われて湿度が低下し、日射量も上昇すれば蒸散は促進されます。そうした時間帯やハウス内の湿度と蒸散量に応じた適正な潅水量を与える必要があると言えるでしょう。

キュウリの苗

以上は1日における潅水量の調節についてのことですが、同様に季節の変化や生育ステージの変化によっても蒸散量は変動します。その変動に応じた潅水量を計算にもとづき算定して、実際の潅水制御装置の設定や動作を行う必要があります。このような複雑な潅水管理は散水チューブによる潅水方法では難しく、均一性と制御性の高い点滴チューブによる養液土耕栽培で実現可能なものと言えるでしょう。

 

なお、散水チューブによる潅水でも、点滴チューブによるものでも、土質の違いによる土壌の保水性や排水性の影響を受けるため、それらを考慮した潅水管理が求められます。

キュウリの養液土耕栽培における施肥管理

キュウリ栽培の潅水管理と養液土耕栽培の特徴について考えてまいりました。養液土耕栽培は、潅水同時施肥とも呼ばれ、一定の濃度や組成の液肥を原水に混入して潅水を行う方法でもあります。そこでの施肥管理は、生育ステージに応じたチッ素量の調整などフレキシブルに行うことができます。これは液肥混入機や流量計、制御装置を組み合わせた養液土耕栽培装置によって実現できるものです。また、すべてを液肥による追肥で行う方法、元肥を施肥した上で液肥を追肥する方法など、自由度が高いことも特徴です。

キュウリの花
キュウリの花

キュウリの養液土耕栽培とゼロアグリ

キュウリ実験圃場
JA全農ぐんま様 キュウリ実験圃場(ゼロアグリで潅水)

ゼロアグリは、点滴チューブを用いた養液土耕栽培において潅水や施肥の制御を行う製品です。日射量と土壌水分量に応じた潅水量の制御が実現でき、シンプルな設定で安定した土壌水分量を得ることができるものです。

前述のような1日の蒸散量の変化に応じた潅水量の調整などは不要であり、生産者は栽培管理や作業に集中でき、また余裕を持ってキュウリの生育状況を観察できると考えられます。さらに新開発の施肥量オート制御機能を用いて、生育ステージに応じた施肥プログラムにより肥料分の濃度を自動調整することも可能です。ゼロアグリは収穫や栽培管理に時間を取られることが多いキュウリ栽培においても、生産者の強い味方になると考えております。

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