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ハウスの換気について|換気装置の概要と調整の方法

ビニールハウスや鉄骨ハウスには、必ず換気装置が装備されています。また換気には、天窓換気、谷換気、側窓換気といった窓を通じた換気による自然換気を行うもの、換気扇による強制換気を行うものがあります。それらの概要について、ご説明します。

自然換気

自然換気とは、前述の天窓、谷、側窓の開口部を通じて、外気を導入したり、内気を外部へ排気するものです。外気の風を利用したり、ハウス内の気流を利用することで、エネルギーをほとんど投入せずに自然換気が行われます。

ハウスでの自然換気は、パイプハウスなど単棟ハウスでは側窓換気が中心となります。また鉄骨ハウスなど連棟ハウスでは天窓換気、谷換気、側窓換気など様々です。これらについて、ご説明します。

天窓換気

最も換気効率が良いのは天窓換気です。ハウスの屋根面頂部に設置され、ハウス内の上昇気流をそのまま外部へ排気することで換気が行われます。天窓換気装置は高い位置にあるため上昇気流を効率的に排気することができ、また外気を導入することで、ハウス内が高温になった場合には速やかに換気を行うことができます。

天窓換気装置は減速機付きモーターなどにより換気窓を細かく開閉可能であり、微妙な温度調節を行うのに適しています。わずかな幅で開閉動作を行い、いったん動作を停止し温度変化に応じて次の開閉動作を行う形になります。これは他の換気装置でも同様な動作になります。

また天窓には両天窓と片天窓、千鳥天窓などがあります。両天窓は屋根面の両側に天窓が設置されたものです。開口面積が大きく換気効率が高くなり、換気によるハウス内温度の低下をより期待できるものです。また両天窓では片側ずつ独立して開閉させることで、例えば強風時には風上側を閉じ風下側を少し開けるといった動作も可能になります。これは強風によりハウス内に外気が強く入り込まないよう、また換気装置の保護のために行う動作になります。片天窓は屋根面の片側のみに天窓が設置されたもので、両天窓のような細かな動作はできませんが、設備コストを抑えることが可能となります。千鳥天窓はオランダ型のフェンローハウス特有の窓配置です。

天窓換気(両天窓)
天窓換気(片天窓)

谷換気

谷換気は連棟の丸屋根型鉄骨ハウスでは最もポピュラーな方式です。屋根面の谷部に外張りフィルムの巻上げ装置を設置し、巻上げによる開閉動作によって谷部の開口面積を調節して換気を行います。

谷換気装置は天窓換気装置に比べ構造もシンプルで、設備コストも安価です。一方で巻上げフィルム1つに対して巻上げ用のモーターも1つ必要となります(天窓換気用モーターは1台で大面積の天窓換気を行えます)。谷換気装置の位置はハウスの軒付近の低い位置にあるため、天窓換気装置に比べ換気効率は劣ります。また丸屋根の頂部付近にたまった熱気を排気することができない構造になります。谷換気装置の巻上げ動作も細かく行うことは可能ですが、天窓換気装置に比べると少しラフとなり、ハウス内の温度変化にも影響が生じることがあります。

谷換気
谷換気(片側のみ)

側窓換気

側窓換気は、ハウスの側面に開口部を設け、側窓フィルムの巻上げによる開閉動作により換気を行うものです。前述の天窓換気や谷換気と異なり、ハウス側面での換気となるため、ハウス内の上昇気流を利用した換気にはなりずらく、外部の風を側面よりハウス内に取り込むような換気のイメージになります。単棟ハウスでの側窓換気は、開口面積を大きく取り、ハウス内を風が水平方向に抜けることで高い換気効率が得られます。一方で連棟ハウスでは植物群落が多くなると水平方向への風の抜けは悪くなるため、天窓換気や谷換気との併用が望まれます。

側窓換気装置は、単棟パイプハウスには必ず設置されています。また鉄骨ハウスや連棟ハウスのほどんどにも設置されていますが、高軒高ハウスやフェンローハウスには設置されないケースも見られます。側窓換気装置は側窓フィルムの巻上げ装置のことで、多くは手動によるものですが、谷換気装置で同様に巻上げモーターにより自動開閉を行うものもあります。

なお軒高によっては、側窓換気装置を2段設置し、1段は手動開閉、もう1段は自動開閉とする場合もあります。換気量を多くしたい高温期には2段とも開け、換気量の少ない冬期には自動開閉のみ使用して手動換気を閉じたままで利用します。

側窓の2段換気(上段は巻上げモーターによる自動換気、妻面の2段換気もみられる
側窓の1段換気

肩換気

単棟ハウスの側窓の上部(アーチパイプの肩部)に巻上げによる換気を行うものです。側窓換気と合わせ換気効率を高めることができます。

肩換気(巻上げモーターによる自動換気)

強制換気

強制換気は、ハウスの妻面に設置された換気扇により排気を行い、反対側の妻面の吸気口から吸気を行うものです。換気扇の容量や台数によって換気量や使用電力量が決まります。強制換気用の換気扇は直径1m程度の大型のものが多く、またシャッター式の吸気口とセットになっています。

強制換気用の大型換気扇

強制換気では、換気扇と吸気口の距離が長いほど、ハウス内で温度勾配が出来やすく、また設備コストや電力料金が必要になる点でも、自然換気に比べデメリットがあります。そのデメリット以上のメリット(強制換気によるハウス内の温度低下など)が見込める場合に導入を検討すべきでしょう。なお強制換気では、ミスト発生装置と組み合わせた細霧冷房や、パッドアンドファンと呼ばれる気化冷却装置と組み合わせた冷房も行われています。

換気の目的と制御

換気の主な目的は、ハウス内温度の制御です。換気を積極的に行うことでの温度低下と換気を抑制することでの温度上昇を組み合わせ、目標とする範囲にハウス内温度を調節することにあります。そうした制御には、温度センサーや環境制御装置が必要になります。環境制御装置には換気専用のもの、暖房機やCO2発生器などの制御も統合的に行うものなど様々な製品がありますので、導入コストや目的用途に応じて選定する必要があります。制御装置には目標温度の他に換気窓の開度や感度といった様々な設定項目があります。それらの設定値により実際の温度変化に影響を及ぼすため、設定に対しどのような温度推移があるかを環境モニタリングのサービスや装置を使い、確認する必要もあります。

換気が抑制された場合には、作物の蒸散によってハウス内の湿度は上昇します。また作物の光合成によってハウス内のCO2濃度は低下します(換気が行われていても作物群落付近のCO2濃度が低下することが知られています)。また換気を行った場合には、一般にハウス内の湿度は低下し、特に外気が乾燥している場合には作物の萎れなどに注意が求められます。こうした点も念頭に換気の制御を行う必要があり、そのためには環境モニタリングが重要になります

その他、換気の目的として、湿度の調節があります。これはハウス内が高湿度となり病害発生のおそれがある場合などに、低湿度の外気を導入することで行われます。一方で換気によりハウス内温度が変化するため、特に厳寒期の夜間などには換気と暖房を併用して温度と湿度をバランスよく調節する方法もあります(換気暖房)

ハウスリノベーションと換気装置

ハウスのリノベーション(修繕や改修)を行う際、被覆資材の張り替えやカーテン装置の修繕を行うことがありますが、その他に換気装置の修繕や改修を行うこともあります。巻上げ式の換気装置であれば、換気用フィルムの張り替えや巻上げパイプ、巻上げモーターの交換などが行われるでしょう。また巻上げ幅の調整を行うこともあります。これは換気口の面積を広げることで換気効率を高める効果があります。その他に、側窓の一段巻上げを二段巻上げに改修し、前述の季節に応じた換気を行うことも考えられます。

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