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ニラ栽培での少量多潅水、日射比例潅水について

ニラ栽培が盛んで、単収も全国トップクラスの高知では、従来法の頭上潅水に加え、点滴チューブを用いた潅水も行われています。本記事では、少量多潅水や日射比例潅水など、ニラ栽培での新技術でもある潅水方法についてご紹介します。

頭上潅水と点滴チューブによる潅水

 

参考文献1)には、収穫後の管理における潅水チューブの利用についての記述があります。ニラ栽培の潅水では従来法として頭上潅水があり、その欠点(病害発生、収穫後の鮮度低下など)を補うための潅水チューブの利用が考えられます。また参考文献2)では、高知県農業技術センターにおけるニラ栽培試験での潅水量や吸水量について以下のように述べています。

 

・ニラ栽培試験の灌水量は、点滴チューブ使用で毎日灌水する場合、冬季で1株あたり日量200ml、春季で300mlを基本としている。

 ・今回の調査の結果から上記灌水量では、3月までは平均吸水量を充足するものの、収穫直前の最大吸水量には足りていない。

・4月収穫では、日平均吸水量390mlの75%程度、最大吸水量740mlでは40%の灌水量となっており、想定以上の蒸発散が行われていることが明らかとなった。

 

このように日射量が増える春先において、ニラの蒸散量や吸水量も増すことで、一定の潅水量では不足することが示されています。さらに同文献では、「生産現場では、毎日灌水していない圃場もあることから、さらに少ない灌水量であると推察される」とし、「灌水量の見直しが必要であることは明白であるが、一度に灌水すると、灌水した水が地下へ流亡する恐れがあるため、 日射比例やタイマー制御など少量多潅水といった方法をとるべきだろう」としています。このように点滴チューブと日射比例制御などを組み合わせた少量多潅水が、ニラ栽培でも有効なものと考えられます。

少量多潅水による養液土耕栽培と頭上潅水による慣行栽培の比較

 

参考文献3)、4)には、ニラの養液土耕栽培でのマルチ下に潅水チューブを設置した例と、慣行の頭上潅水+ふり肥(マルチの植え孔から液肥が浸透)の例を比較しています。収量は養液土耕栽培が慣行栽培を5~6割程度上回っています。また根圏も養液土耕栽培では条間に発達しているのに対し、慣行栽培では植え孔直下に細根が発達している様子が参考文献3)の画像で伺えます。

ニラの吸水量と刈取りによる生育および日射量との関係

 

戻って参考文献2)では、高知県農業技術センターでのCO2施用を行ったニラ栽培における吸水量について、ニラの生育や日射量との関係について試験報告がされています。高知県では果菜類を中心に環境制御技術の導入が推進され、出荷量の多いニラでもCO2施用などの取組みが始まっています。また日射比例制御による潅水装置の導入も進んでおり、刈取りによって草丈や葉面積の変動が大きいニラ栽培での適切な潅水量の設定が必要とされています。

 

試験では11月中旬から3月上旬まで常時400ppmを下回らないようCO2施用を行っています。そこでのニラの晴天時平均吸水量は、1月から4月にかけて日射量に沿って増化しています。またニラは刈取り後には草丈と葉面積がほぼゼロの状態から再生が始まるため、刈取りからの生育初期では生育日数に応じて吸水量が増加するものの、晴天時の日射量による影響は少ないとしています。これは葉面積がまだ小さい期間のため、日射量の変動の影響を受けにくいと推察しています。生育中期以降は生育日数の影響はみられず、晴天時の日射量の影響が大きくなっており、これは葉面積増加の影響としています。このように刈取りによる葉面積の変動の大きいニラ栽培では、刈取りからの生育日数と日射量の双方に留意した潅水が必要になるものと考えられます。

今後の展開

高知県農業技術センターの橋本和泉氏による参考文献5)では、2018年時点の高知県でのハウスニラ栽培について、一般的な作型として播種:2~4月、定植:5~8月、収獲:9月~翌年6月を、また1株の刈取り回数を6回程度、目標収量を8.8t/10aとしています。さらに液化炭酸ガスによるCO2施用、慣行の1.5倍程度の量の多潅水(1日一回)、電球型蛍光灯による電照を組み合わせた試験結果を紹介しています。これらの組み合わせにより最高で15.4t/10aという高い可販果収量が得られたことを示しています。一方でCO2施用での葉先枯れの発生、電照開始のタイミングによる早期抽苔におそれなどの問題も指摘しています。なお参考文献6)には、以上の試験についての具体的なデータが記載されています。この試験は少量多潅水ではなく、1日1回の多潅水によるものでしたが、養液土耕栽培による少量多潅水による効果も同様に期待されるものと考えられます。

参考文献

1)ニラ -定植後の管理-(2014年)、こうち農業ネット

2)安岡由紀・糸川修司、炭酸ガス施用下での施設ニラ栽培における吸水量と生育および全天日射量との関係(2018年)、高知県農業技術センター研究報告 27号 P9-14

3)高知県農業技術センター、点滴チューブを利用したニラ追肥のかん水同時施肥法

4)高知県農業技術センター、点滴チューブを活用したニラかん水同時施肥における時期別かん水量

5)高知県農業技術センター、炭酸ガス施用条件下におけるニラの増収技術

6)橋本和泉、葉物でも始まった環境制御 炭酸ガス、電照、多かん水でハウスニラ15%増収、現代農業:2018年1月号 P178-181

※各リンク先は、2023年5月25日に確認済。

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