ブログ導入事例

松井農園様(奈良県磯城郡・メロン)|育種のための効率的な栽培と均質な環境構築にゼロアグリが貢献、日本発の種子でグローバル市場に挑む

所 在 地:奈良県磯城郡

ゼロアグリ導入作物:メロン(種苗)

ゼロアグリ導入規模: 1.5ha

経営体:法人

ー自己紹介をお願いします!!

種苗会社の中でも、「育種」という新しい品種を作るのをメインでやっている会社で、スイカとメロンと品種改良に取り組んでいます。代表的なもので、「肥後グリーン」は当社が開発・販売している品種です。また、副次的に一部メロンの生産にも取り組んでいます。

ーゼロアグリに興味を持ったきっかけについて教えてください。

 

取引先でもあったある青果業者さんからご紹介いただいたのがきっかけです。当時2017年くらいで、ゼロアグリも実績が少ない初期の頃だったと思うのですが、最初は名前も聞いたこともなくて「なんじゃそりゃ」という感じでした(笑)

 

ーゼロアグリをいれる前はどのように潅水をされていたのですか?

 

手潅水ですね。500リッターのタンクに、地下水を汲み入れて、それをポンプで流し込むといったようなやり方でした。そうすると、当然水の出るところと出ないところがあったりして、ものすごくムラがありました。

ーゼロアグリの導入の決め手について教えてください。

 

品種改良を進めていく上では、どれだけ効率的に圃場を管理するかというのが重要です。

 

品種改良とは、ある集団から、だめなものは捨てて、目的に適った個体の種をとっていくという「選抜」がメインの仕事になります。たとえば病気につよい品種と味の良い品種を組み合わせて、病気に強く味の良い品種を作ろうということで、掛け合わせて選抜していきます。選抜する方法はDNAマーカーを使って選ぶ方法や実際に食べて美味しいものを選んでいくなどいろんな方法もあります。

良いものを作るためには、基本的には母数を大きくした方が良いものがとれる確率が高くなるロジックなので、いかに効率的に圃場を運営するかというのはキーポイントなんです。

 

今まで手潅水だったのもあり、水やりや液肥管理に関して、人を割かないといけなかったり、自分のリソースを割かないといけなかったところに、ゼロアグリを使うことで効率化をすることができる、というのはとても大きなメリットでした。それにより栽培面積を大きくして、母数を増やすこともできるので、より良い品種を作ることができる可能性を高められると思いました。

ー一般的な生産者さんとは栽培の目的が少し違うのですね。

 

そうですね。栽培する作業やプロセス自体は通常の生産者さんと同じです。ただ、生産者さんは良い青果物を作るのが目的だけど、私たち育種会社では良い個体の種を取ることが目的になります。

 

 

ーゼロアグリを使ってよかったことはありますか?

 

ここらへんの地域は、水田地帯なので、水田が始まってしまうと、ハウス内の地下水位があがってしまってまともに栽培ができないという課題があります。そのため、ハウス栽培をするために、客土をしないといけないんですね。客土するってなると、そこまでコストの高い良い土は入れられないので、山から真砂土のような土を持ってくる形になります。この土が、そこまで水捌けもよくない割に一部れきのようなものも混じっているような土なので、水が抜けるところは抜けてしまって、栽培にもムラが出ていました。それに加えて、従来型の潅水チューブを使った潅水では水の出方にもすごくムラがありました。

それでゼロアグリをいれて、土壌水分量に合わせて、1時間に1回一定の時間で水を流せるようになって、環境要因を平準化することができるようになりました。

先ほどの話で良い品種を選抜していくために、できる限り均質な条件で栽培をして、品種の力で競わせていくことが重要なんですよね。ゼロアグリにより、それが簡単にできるようになったのが良かったです。

ー当初ゼロアグリを使い始めて苦労したことはありますか?

 

地域柄、地下水の鉄分が多いので、最初地下水を使って潅水をしたら点滴チューブがつまりました。水に溶け込んだ鉄分と、肥料成分が結合して、白い化合物が出来、それが目詰まりの原因となりました。

1反分まるまる、チューブを張り替えたこともありました。

そこから上水に切り替えて、いまは上水で潅水をしています。コストはかかりますが、目詰まりの心配が解消されました。

 

また、客土している土の下が粘土質なこともあり、ゼロアグリの準備潅水を2日間やったら、圃場が底なし沼のようにズボズボになってしまったこともありました。

 

1つ1つそういったことを経験していって、その度にこうすれば良いんだという解決策を見つけて、慣れていった感じですね。

 

ー種苗事業に関して、現在はどういった市場に販売をしているのですか?

 

もともとは国内向けの種子販売がメインだったのですが、高齢化が進んでいることもあり、どんどん国内種子マーケットが縮小していることに危機感を感じておりました。それで、一時期、弊社オリジナル品種を活用した青果物事業に取り組んだ時期もあったのですが、費用対効果が合わなかったり課題も多かったです。

そんなタイミングで、海外種子市場に注目するようになりました。色んな国で日本品種に対する関心の高まりが背景にあります。それで、やっぱり自分たちの強みである種苗事業に注力していこうということで、現在は特に中国へ種子を輸出しています。

また、今後はアメリカにも進出したいと思っています。アメリカだと種子価格も高いですし、きちんと価値評価をしてくれるマーケットでもあるので、他の国とはと違った魅力があります。アメリカは、これまでと人口構成が変わってきているのもあり、食生活も変わってきているんですよね。今までと違ったタイプの果物に対するニーズが高まってきているので、可能性があるのではと思っています。

 

これら市場開拓や事業開発のために、研究開発の基盤が安定してきているのは、ゼロアグリのおかげだと思っています。

 

来月、アメリカに行く予定があるのですが、多忙な中で、スマホでも現場の潅水施肥を管理できるのも良いですよね。

ー事業がグローバルですね!

 

アメリカに育種の勉強のために留学していたこともあり、アメリカの多様性や新たなものを受け入れる文化は素晴らしいと思っています。

 

ゼロアグリをやってみようと思えたのも、そういう留学時代に培ったマインドがあってのことだったのかもしれません。

 

 

ーゼロアグリに関して、どのように活用していきたいなど展望はありますか?

 

例えばお客様が多くいる熊本で、種とゼロアグリを使った栽培技術をセットにした展開ができたら面白いと思っています。

ゼロアグリは水と肥料という栽培のベースを支える技術なので、活用することでかなり有益と思ってくれる人もいるんじゃないかと思っています。高齢化でやめていく生産者の方も増えてきていますし、そうすると若い人が面積を増やしていくためには、ゼロアグリのような仕組みが必要です。熊本のメロン栽培をされている方は、ハウス自動開閉はいれている方は多いですが、その他のスマート農業システムのようなものはまだまだ普及していないと思います。ゼロアグリを活用することで、自身が経営に徹して、現場作業と分けてリソース配分するような観点ができると思うんですよね。

圃場のエリアが離れている人も多いので、もう少しライトに入れられるような仕組みがあっても良いかもしれません。

 

ーゼロアグリはメロンやスイカで活用可能性があると思いますか?

 

あると思います。ただトマトやキュウリと違って、メロンやスイカでは、ゼロアグリの導入による大幅な収量増加を期待することは難しいかも知れません。活用するメリットは効率化により面積がこなせること、それから均質性が保たれることです。良いものをたくさん生産して面積をこなせるということはメロンやスイカ栽培にとって大事なことだと思います。

あとはメロン農家の方は、裏作でナスなど別の作物を作っている方も多いので、そういった別の作物もゼロアグリ1つで管理できるのもメリットですね。

 

 

ー今後の目標を教えてください!

 

ゼロアグリを活用しながら、やっと研究開発や育種の基盤ができてきたと思っています。

次にやりたいのは「人」の育成です。

品種改良をしていくような僕らの職業を「プラントブリーダー」という言葉でいいますが、ブリーディングできる人を育てる「ブリーディングアカデミー」をやりたいと思っています。

日本の農業だけ見ると、高齢化や人手不足など多くの課題がありますが、「種」という観点で見ると、世界中のどこへでも挑戦できる可能性があると思っています。世界の中で「育種」っていう仕事をやっているところって、実はそこまで多くないんですよ。フランス、オランダ、アメリカ、中国、韓国のような限られた国でしかやってなくて、日本はこれまでやってきた知見があると思っています。日本型の「育種」ができる人を育てていきたいし、それとともに会社も大きくしていきたい。いずれは、SPAみたいに、種苗から生産、販売まですべて手がける会社にしたいですね。

ーありがとうございました!

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