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施設園芸(ハウス栽培)におけるコスト低減の考え方

近年の資材コストやエネルギーコストの上昇は、施設園芸の生産コストを上昇させ、収益の悪化要因となっています。また最低賃金の上昇に合わせたパート従業員の時給改定などもあります。一方で、そうしたコストを農産物価格に転嫁することは一般的に難しい状況にあり、経営を圧迫しています。本記事では、そのような状況でのコスト低減について考えてまいります。

コストについての捉え方

 

必要なコストは、時と場合により変化します。例えば冬期の暖房について、最低限の作物の生育を確保するための夜間温度があり、それを保持するための燃油量と燃油コストが必要になります。また、ある程度の収量を得るには、夜間温度を上昇させ作物の転流を促進する必要もありますが、それにはさらに燃油量と燃油コストも必要となります。最終的には、かかったコストと得られた売上より収益を計算し、それを最大化する必要があります。以上述べたことだけでも、コストについて様々な捉え方、考え方があることが分かります。以下に例をお示しします。

コストはなるべくかけない考え方

重油や肥料の単価が上昇する中で、従来通りにそれらを使用していてはコストがかかり、支出も増えます。そうならないよう、使用量を切り詰めて支出を抑えるという考え方です。この場合には、収量の減少に結びつくことが多く売上も減るでしょう。例えば、暖房の設定温度を下げ重油使用量を減らすことは簡単にできます。その結果として作物の成長や果実の肥大が遅れたり、湿度の上昇による病害の多発も危惧されます。また栽培面積そのものを減らし支出を抑えるという考え方もあると思います。これも支出を抑える一つの手段ですが、収量や売上は大きく落ち込むでしょう。結果的に収益性も低下する可能性も高いと言えるでしょう。

必要最小限のコストはかける考え方

従来のレベルの収量を維持するため、必要最小限のコストはかけるという考え方です。ただし必要最小限といっても、以前よりはコストアップになるため収益性が低下する恐れがあります。収益を維持するには、必要最小限の程度を見極める点が重要ですが、それは簡単には決められない問題と言えるでしょう。以下に収益確保の際にコストをどのように抑えていくかについて掘り下げてみます。

コストを抑え収益を確保する観点・考え方

かけるコストと得られる収益のバランスを考えて、なるべく収益を最大化するという考え方です。より高度な分析や判断が求められるため、すぐに取り組むことは難しいかもしれません。そこでの具体的な観点を以下に示します。

観点1:収益性の重視

従来は、収量増と売上増や収益増が比較的噛み合っていたかもしれません。しかし各種コストの上昇と販売価格の低迷の中では、たとえ収量や出荷量を増やしたとしても売上にあまり貢献しないケースや、コストがかさみ収益が逆に低下するケースも考えられます。今後はこうした点に注意し、どのように収益を確保するのかについて頭を切り替える必要があると言えるでしょう。

例えば単価が低下する時期の出荷量を見直したり販売先を変える、作型をずらし出荷量を調整する、といった生産と販売面での検討が考えられます。市場出荷のみの場合では難しいかもしれませんが、経営のスタイルから見直す必要もあるかもしれません。また収量を増やすのに必要な、暖房やCO2施用のための燃油コスト、収穫や出荷のための人件費なども、売上に対し妥当なものかも検討する必要があるでしょう。

観点2:詳細な使用量やコストの把握

上記のようなコストの検討を行う場合には、詳細なデータが必要になるでしょう。青色申告などで出される経費は年間を合算したもので、しかも2つの作付けを跨いでいることが多いものです。これでは検討材料とするには荒いデータとなり、具体的な分析も難しいでしょう。理想を言えば日々の各種コストを把握するべきですが、週間や月間などで集計し、その間にかかった各種コストを把握するのが現実的と思われます。

一方、燃油単価などには動きがあり、かかったコストだけでは状況を把握するには不十分と言えます。価格変動がある場合には期間別の使用量を伝票などからチェックして集計する必要があるでしょう。最近は燃油タンクにセンサーが取り付けられ使用量がデータとして残される場合もあり、利用価値のあるデータとなっています。

観点3:費用対効果の分析と改善

以上のように期間別にかかった各種コストやその使用量が集計されれば、その期間における収量や販売量、販売単価や売上と対比することが可能になるでしょう。その際に、どれだけの資源(労働力、燃油、肥料、出荷資材など)とコスト(人件費、光熱水費、資材費など)を投入して、どの程度の売上や収益が得られたかを分析する必要があります。資源の投入から売上が立つまでには時間差もあるため、データを観る際には注意も必要です。また重点的に観るべきコストを把握することも大切で、構成比の小さなものにこだわる必要は無いと言えるでしょう。

実際の分析は、グラフ化や前年との比較、量や単価を調整してのシミュレーションなど様々な方法が考えられます。そして収益に貢献していない、低減すべき資源やコストをみつけ、それを抑えること、さらに使用量を増してコストもかけ、売上や収益を増やすべき点をみつけ実行すること、といった改善策を検討することになるでしょう。

今後の展開

このようなコストの低減の取り組みには、様々なデータを収集、分析する必要があり、作業的にも重いものがあるかもしれません。また、Excelなどのツールを使いこなす必要もあるでしょう。さらに、個人ではなく、グループの活動として取り組み、他の生産者との比較において改善箇所を把握することも考えられます。データを活用する施設園芸が近年盛んに取り組まれるようになりましたが、それらにおいても最終的に収益をいかに高めるかがポイントであり、ここで示した経営に係わる各種データが益々に重要になるものと考えられます。

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