キャッサバの栽培と利用・日本での栽培について
栽培
キャッサバは、熱帯・亜熱帯地域において約8億人の食料となっている重要な芋作物です。日本ではあまり一般的ではありませんが、世界的にはジャガイモやサツマイモと並ぶ主要な作物であり、キャッサバから作られるデンプンは食品や工業用にも広く利用されています。本記事ではキャッサバの特徴と利用、日本での栽培などについてご紹介します。
キャッサバとは
キャッサバは中央アメリカから南アメリカが原産地と考えられる作物です。トウダイグサ科の草本性低木で、樹高は1~5m程度、地下部に塊根(イモ:長さ15~100㎝、直径5~15㎝)が肥大し、その数は5~10個/株になります(高収量品種では10~28個)文献1) 。
キャッサバは環境適応性の高い作物であり、肥沃でない土地や乾燥地、降雨が不安定な地域でも生育することが知られています。文献1)では、降雨条件として年間1500mm以上の降雨量をあげていますが、年間600mm程度の半乾燥地帯などでも栽培が行われているとしています。また最適な温度条件は25~35℃程度と広く、乾燥に対しても気孔を閉じ水分保持を行うなど強い特徴をあげています。耐寒性は低く、日本国内で栽培する場合にはネックになると考えられます。根圏は地下2m以上に広がることもあり、表層が乾燥していても土壌水分を確保できる作物です。土壌に対する適応性も高く、無肥料でもある程度は塊根が発達します。排水性の高い土壌での生育が良好とのことです。

キャッサバの可食部は塊根の他、葉があり、アフリカでは葉を野菜としても利用しているとのことです。塊根が主食として利用されますが、たんぱく含量が低く、一方で葉にはたんぱく質やビタミンA・B・C、カルシウムなども多く含まれています。
キャッサバには有毒成分が含まれ、その多少によって2つの群(苦味種と甘味種)に分類されています。苦味種には有毒成分としてそれ自体には毒性はない青酸配糖体が多く含まれ、別に含まれている分解酵素との接触が組織の傷などにより生じることで有毒な青酸が発生することがあります。青酸配糖体を多く含む場合、流水にさらしたり微生物発酵による加水分解など様々な方法で解毒が行われています。またアフリカでは解毒したキャッサバ粉の製造も盛んに行われています。
キャッサバは栄養繁殖(挿し木)により増殖され、挿し木の定植後の半年~4年程度の間に収穫が行われています。挿し木苗は1m×1m程度の間隔での定植が推奨され、雨期の期間に行われています。アフリカの伝統的な栽培ではトウモロコシの後作で無施肥により栽培されているようですが、単収向上には窒素やカリの施用が有効とみられます。
世界のキャッサバ生産
2022年のFAO統計によると、キャッサバは世界の主要食用作物の中で7番目に栽培面積が広く、約3,200万ヘクタールに達しています 。総生産量は3億3,000万トンで、乾物生産量ではジャガイモを上回ります 。生産量を地域別に見ると、アフリカが全体の63%を占め、次にアジアが29%、南米が7.8%と続きます文献2) 。主要生産10か国は上位からナイジェリア、コンゴ、タイ、ガーナ、カンボジア、ブラジル、インドネシア、ベトナム、アンゴラ、モザンビークで、これらの国の生産量は世界の総生産量の75%となります。
アフリカはイモ類の消費がさかんであり、西アフリカから中部アフリカにかけて、キャッサバやヤムイモが大量に生産されています。キャッサバは他の主要作物に比べて収量が高く、収穫面積当たりのカロリー生産量も多い点が特徴です。前述のように高温や乾燥に強く、また酸性土壌や低肥沃土壌でも栽培が可能で、栽培管理も簡易であり、熱帯の少雨地域において重要で不可欠な作物となっています文献3)。
日本でのキャッサバ生産
鹿児島県の徳之島にある合同会社徳之島絆ファームでは、キャッサバの栽培に適した徳之島の亜熱帯気候を活かし、キャッサバの芋や苗、及びコロッケ等の加工品の生産販売をしています文献4)。
文献3)には、同ファームでの栽培品種について「島内で自生していた在来で細葉のホワイト、ブラジル原産で広葉のイエロー、およびペルー原産で沖縄から持ち込まれた細葉のイエローの3種」としています。徳之島にキャッサバが自生し在来の種となっていることには驚かされますが、いずこの時期に島外から持ち込まれたものなのでしょう。また栽培法について「植え付け前に苗木に殺菌・殺虫剤と発根剤を施し、ビニールハウスまたは露地の畝に斜め植えする」とあります。苗木自体は前作の塊根収穫後に採取をした挿し木苗になります。また植え付けはマルチングをした畝へ3〜4月に、収穫は翌1〜2月に行うとしています。施肥について堆肥や鶏ふんを使用すること、病虫害について葉の縮れ症状(キャッサバ・モザイク病に類似のウイルス病)や不特定な病害虫などをあげています。また気象的なこととして冬期の低温による被害や台風による被害をあげています。病害虫が多い環境であり台風襲来も多い亜熱帯の島でのキャッサバ栽培は、おそらく様々な苦労が付きものかと思われます。
国内ではその他にも愛知県などでの栽培事例文献5)があるようです。長期にわたるキャッサバ栽培では低温遭遇を避ける必要があり、国内で栽培可能な地域は前述の徳之島を含む南西諸島や本土の冬期温暖な箇所に限られるものと考えられます。
キャッサバの需要と今後の展開
キャッサバの塊根から得られるデンプンは、デンプン粉に加工され食用や食品加工原料、また製紙や接着剤、バイオエタノール等の工業原料としても重要なものになっています。食品用ではタピオカ粉としても利用され、日常的にも馴染みのあるものです。キャッサバによるデンプン粉の生産では、ジャガイモなど他の作物によるものに比べ、抽出が比較的容易、低コストなど、多くのメリットを持っています文献6)。また小麦粉などに含まれアレルゲンとして取り上げられることもあるタンパク質のグルテンは、キャッサバのデンプン粉には含まれないという特徴もあります。
世界的にもキャッサバのデンプン粉需要が急増し、供給も追い付かなくなっているとのことです。これは前述の食用や工業用の各種原料としての用途が拡大していることがあり、さらに食用に加え家畜飼料にもなるなど、食料生産資源としての重要性が高まっていることが考えられます。一方で気象条件や土壌条件などが合えばキャッサバは栽培が容易であり、また肥料やエネルギーなどの資源投入も比較的少ない作物と言えます。地球環境の変動と資源保護の流れの中で、今後も注目される作物と言えるでしょう。
参考文献
- アフリカのイモ類 -キャッサバ・ヤムイモー (2006)、国際農林業協力協会
- 徳永浩樹、東南アジアにおけるキャッサバ栽培~現状分析と国際共同研究の展望~、いも類振興情報 160号 2024.7
- 坂上潤一他、国内外におけるキャッサバ生産とその諸問題(2020)、砂糖類・でん粉情報2020.12
- あまみ徳之島 絆ファーム WEBサイト
- タピオカの原料『キャッサバ』を愛知県新城市の住民が休耕地で栽培、オンエアレポート 2024.09.19
- 稲泉博己、世界のキャッサバの生産動向(2012)、農畜産業振興機構

■執筆者:農業技術士 土屋 和(つちや かずお)
育苗装置「苗テラス」の開発など農業資材業界での経験を活かし国家資格の技術士(農業部門)を2008年に取得、近年は全国の施設園芸の調査や支援活動、専門書等の執筆を行っています。







