熱帯果樹の栽培 ー国産のバナナ栽培についてー

栽培

バナナは、東南アジア原産のバショウ科の果物であり、熱帯から亜熱帯に広く分布する多年生の大型草本です。その原産地は熱帯アジアといわれています。バナナ栽培は世界中の熱帯および亜熱帯地方で5,000年以上も前から行われており、日本には明治21年(1888年)に沖縄県に小笠原種が導入されたのが始まりといわれています文献1)。本記事では、温暖化の進展とともに拡大傾向にある国産のバナナ栽培についてご紹介します。

バナナの国内の消費と栽培の動向

国内のバナナ消費は旺盛であり、うんしゅうみかん、りんご等の国産果実の購入数量が減少する⼀⽅で、バナナは増加傾向にあります。また果実1⼈1年当たりの購⼊数量ではバナナがトップで6.4kg(全22.3kg)となっています(令和5年総務省家計調査)文献2)。現在、日本で消費されるバナナのほとんどはフィリピン産などの輸入品ですが、近年、国内でのバナナ栽培、特に耐寒性品種や栽培技術の進化により、国産バナナへの関心が高まっています。栽培は、従来から栽培が行われている沖縄、九州、そして後述の凍結解凍覚醒法の登場以降、関東地方でも拡大しています。日本農業新聞の調査によれば全国の41都道府県においてバナナ栽培実績があるとのことです文献3)

バナナの生育特性と生育環境

バナナの生育最適温度は29〜31℃です。一般的には平均気温が21℃以上が好ましく、沖縄県などでも冬期に平均気温が21℃以下になると生育不良や果実肥大不良が起こります。果実は12℃以下で寒害を受け、特に5℃以下になると葉は黄化します。またバナナは単為結果で、沖縄県においては年間を通じて結実し、夏期に成熟する果実が多くみられます。花芽分化から開花まで約1ヶ月、開花から収穫までには約70〜80日を要しますが、12℃以下の低温期には果実の肥大が悪くなり、収穫日数が170日を超える場合もあります。一般的にバナナの果実は青い状態で収穫され、追熟後に出荷されます文献1)

土壌は水はけが求められ、有機質に富んだ土壌が深さ60㎝以上あることが望ましく、pH5.5~6.5程度が生育に適しています。またバナナは草本植物であり、風速20m/s以上の強風で茎が折れたり葉が裂けるなど風害に弱く、強風地域では防風対策が必要となります文献1)

国産バナナ栽培を支える革新技術

国産バナナ栽培の全国的な拡大を可能にした要因の一つに、凍結解凍覚醒法文献4)5)と呼ばれる耐寒性を持たせる栽培技術があります。バナナは低温に弱いにもかかわらず、本州や低温地域での栽培を可能にしたのが、岡山県で開発された凍結解凍覚醒法です。
この技術は、バナナの生長細胞を氷点下で凍結させた後に解凍させ生長させることで、低温に対する耐性を獲得させる方法です。この処理を施された苗は、生育が加速されるとともに、冬期の集中した加温(24~26℃程度)と無加温(13℃程度)を繰り返す省エネ的な温度管理での生育や収穫が可能となります。
例えば、長崎県南島原市では、この技術を用いた苗を導入し、高収益作物として期待されています。この方法で栽培されたバナナは、一般的なバナナの糖度15度を大きく上回る25度に達し、濃厚な甘さが特徴とされます文献6)。宮崎県川南町でも、この「凍結解凍覚醒法」で栽培された国産有機バナナ「有機バナナ(NEXT716)」が特産品となっており、農薬を使わないため皮ごと食べられるという特徴を持っています文献7)

国産バナナ栽培での品種選定

愛知県の知多半島でバナナ30品種以上を約10年間ハウスで栽培している大森直樹氏は、現在国内に個人輸入などを含め100品種以上のバナナが流通しているとしています。そのため品種選びの際には、「耐寒性」、「背丈の高さ」、「果実の見た目、味など」の3点が重要であり、以下のような品種を示しています文献8)

• 耐寒性に優れる品種: ドワーフナムアやカリフォルニアゴールド、ハクムクツァン(アイスクリーム)は耐寒性がかなり強い。前2品種は草丈も1.8〜2.5mと比較的低く、無加温ハウスや場合によっては露地栽培にも適している。

・背丈の高さ:前2品種のドワーフナムアやカリフォルニアゴールドの他、いくつかのドワーフ系などがあり、ハウス栽培では高さに限界があるため、これらの品種から選ぶとよい。

・果実の見た目、味など:ドワーフドジャマイカンのように果実が赤紫色になる品種は、見た目による差別化が期待される。その他にハクムクツァンは耐病性が強く、果房が大きく多収性で、甘みと酸味のバランスが良い品種である。

今後の展開

以上のような新技術や品種選定により、国産のバナナ栽培は西南暖地から関東地方などへも広がりをみせています。例えば埼玉県では新たな果樹の振興品目のひとつとしてバナナをレモンやマンゴー、ポポーなどとともに取り上げ、「本県の気象条件でも栽培が可能で需要が見込める品目については、今後の新規品目としての導入の可能性を検討し、戦略的に産地化を図る。」としています文献9)。また県内での栽培もすでに行われています文献10)。その他にも国産のバナナ栽培は、近畿地方でも広がっています。京都府亀岡市では新規就農者が法人を設立し、2022年7月に初収穫を行い京都市内のカフェや直売所に出荷しています。また兵庫県姫路市や和歌山県海南市などでも栽培が行われています文献11)。さらに新潟県柏崎市のように産業廃棄物処理施設の排熱を利用し、地域資源を有効活用しての寒冷地での通年栽培を行う新たな循環モデルも出現しています文献12)

参考文献

  1. 渡慶次賀敬・松村まさと、栽培の基礎(バナナ)2025、『農業技術大系』果樹編 第7巻、農文協
  2. 果樹をめぐる情勢 令和6年10月、農林水産省
  3. バナナ栽培実績がある都道府県、日本農業新聞 Xポスト
  4. 田中節三、タネの凍結解凍覚醒技術(その1) 超低温で作物の耐寒性の記憶を呼び覚ます、現代農業 2017.1
  5. 田中節三、タネの凍結解凍覚醒技術(その2) ゆっくり温度を下げながら凍結させる、現代農業 2017.3
  6. 「凍結解凍覚醒法」バナナの栽培を開始、南島原市WEBサイト 2022年6月20日
  7. NEXTファーム宮崎WEBサイト
  8. 大崎秀樹、幸せバナナライフのための失敗しないバナナ品種の選び方、現代農業 2025.2
  9. 埼玉県果樹農業振興計画、埼玉県 令和3年3月
  10. 【大宮マルイ】埼玉県のバナナ農園に行ってみませんか。、無印良品WEBサイト 2021/05/10
  11. え!京都府産バナナ?(京都府亀岡市)、近畿農政局 新鮮 mini情報 2022 10、近畿農政局和歌山県拠点
  12. 雪国・新潟生まれのバナナ!環境にやさしい循環型ハウス栽培、情報かわら版 2024 7、北陸農政局新潟県拠点

■執筆者:農業技術士 土屋 和(つちや かずお)
育苗装置「苗テラス」の開発など農業資材業界での経験を活かし国家資格の技術士(農業部門)を2008年に取得、近年は全国の施設園芸の調査や支援活動、専門書等の執筆を行っています。